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岡崎慎司「日本人の特性という武器だけではダメなんです」欧州で遠回りをしないために伝えたい“自己確立”の大切さと“部活の可能性”
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2023/01/19 11:17
2016年、「ミラクル・レスター」の一員としてプレミアリーグ優勝を成し遂げた岡崎慎司。持ち前の献身的なプレーで快進撃の立役者となった
――でも、自分のことだけでなく、チームを俯瞰して見たり、チームメイトのことを考えたり、いわゆる「フォア・ザ・チーム」の思考を磨く時間になったのでは?
「そうですね。客観的にチームやチームメイト、自分のことを見られる土台作りになったと思っています。プロになり、ヨーロッパに来ても『チームのために自分が何をすべきか』という視点を持ち、居場所を作ることができました」
「献身的な思考」が足かせになることも?
――ヨーロッパや南米、アフリカなど、海外の選手は自己主張力が強い印象があります。そういうなかで「チームのために」という思考を持てることは、しばしば日本人選手の強みだと言われます。
「僕もそうだと思っていました。その思考が自分の武器だと。でも、『チームよりもまずは自分』という選手たちと競争するうえで、『この思考が足かせになっているんじゃないか?』と考えることが、ここ数年増えてきました」
――チームメイトへパスを出すよりも、自分のシュートを優先する……。特に攻撃的なポジションはそういった選手も少なくないですよね。ステップアップするには、結果を残すことが一番ですから。
「海外の選手のそういうエネルギー、強さを前にしたとき、苛立ちや悔しさも当然感じます。だから僕自身も彼らのようにエゴイストになるべきだと考えたし、やろうともしたけれど、『自分らしくないな』と居心地の悪さを覚えるんですよね。自分らしさを貫くとか、いろいろ試行錯誤をしたけれど、簡単に解決するものでもなかった。これは僕だけでなく、多くの日本人選手が体験することだと思うんです。もしかしたらサッカーに限らず、ヨーロッパで仕事をする、暮らす人たちも感じていることかもしれません」
――日本と欧州の環境や文化、教育の違いがあるので、価値観も異なりますよね。
「ヨーロッパは個人主義というか、個々人が自立しているし、子どもであっても自分の考えを持ち、それを主張することが大前提にある。だからこその強さがあるんです。日本人にも日本人ならではの団結力や組織力といった強さはあります。でも、それだけでは、世界やヨーロッパで勝てない」