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「PK戦に強くなる」ことは可能なのか? 岡崎慎司がW杯を見て感じた“背負いすぎ”問題「日本人の美徳とも言えるんだろうけれど…」
posted2023/01/19 11:15
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Takuya Sugiyama/JMPA
クロアチアとの決勝トーナメント1回戦。PK戦の末、日本のW杯カタール大会はベスト16で幕を閉じた。その後、日本では「PK戦で勝つために実戦の機会を増やすべき」といった議論の熱が高まっている。選手たちにPKの実戦経験を積ませることで、果たして本当にW杯のPK戦で勝てるようになるのだろうか? 率直な疑問を、代表通算50ゴールを誇る岡崎慎司にぶつけてみた。(全3回の1回目/#2、#3へ)
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「W杯のPK戦で勝つのが目的ならば…」
――クロアチアに敗れたあと、日本では公式戦でのPK戦の機会を増やして、「PKに強い選手」を作ろうという動きがあります。
「そういうトライをすること自体は、決して悪くはないと思います」
――そうやってPK戦に強いキッカーやGKを育成することは可能だと思いますか?
「育てるのは難しい。W杯のPK戦は、ただのPKじゃないですから。そこで勝つのが目的ならば、普段の試合でPKを取り入れても、あまり役に立たないんじゃないでしょうか」
――ワールドカップのPK戦で勝つために一番必要なことはなんだと思いますか?
「もちろん技術もあるけれど、結局はメンタル、精神の問題なので」
――プレッシャーに負けない強さということでしょうか。
「強さというか、いかに“自分中心”に考えられるかという面があると思います。ヨーロッパ基準で考えると、日本人の責任感の強さ、『チームのために』という想いが、必ずしも武器になるとは限らないと感じています」
――今大会のハリー・ケインしかり、かつてのロベルト・バッジョしかり、W杯などの大きな大会でエース級の選手がPKを失敗してしまうという歴史がありますが、彼らも「チームを背負う」という感情が強すぎた結果なのかもしれませんね。
「だと思います。ヨーロッパでプレーして感じるのは、彼らは常に自分のことに矢印を向けているんですよね。『自分がのし上がっていくために』という感情を強く持っている。彼らは子どものころから勝つか負けるかの日々を送ってきている。負けたら何も言えない。勝ったヤツが強いんだと。言い方は悪いですけれど、多くの選手が『自分のことだけを考える』という感覚でPK戦にも挑んでいるし、同時に、どんなにヒールになっても勝ちをもぎ取るという意識も根づいていると感じます」