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「大谷翔平の“縦出し”お手本はトラウト」「吉田正尚ならMLBでも…」ラオウ杉本の覚醒を導いた3A経験者が語る“日米スイングの違い” 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byNanae Suzuki

posted2023/01/14 17:01

「大谷翔平の“縦出し”お手本はトラウト」「吉田正尚ならMLBでも…」ラオウ杉本の覚醒を導いた3A経験者が語る“日米スイングの違い”<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

メジャーに挑む吉田正尚と、メジャーで活躍する大谷翔平。彼らについて根鈴氏に語ってもらった

〈「これでやる方が分かりやすいかな」と根鈴氏はクリケットのバットを持ちだした〉

 ボールに対して、バットを縦に出していく。クリケットのバットを使えばよくわかるけど、バットの長い面を全部使って打てる。横からバットを出すと一点でしか芯に当てることができないけど、縦に出せば長い面が全部使える。

 そして縦出しだと当たり損ないは、前に飛ばなくてファウルになる。打ち損ないがフェアグラウンドに飛ぶ可能性がぐっと小さくなるんですね。

バットの長い面のどこかにボールが当たれば…

〈野球のバットに持ち替えて、根鈴さんはなおも説明を続ける〉

 今も言ったように、日本はバットを横から出して球の芯を打つバッティング技術の精度は凄く高いと思います。でもこの打法だと、速い球が来たときはそれに負けないバットスイングをしなければならない。そして振りぬくために手首を返すことになる。筒香嘉智選手や秋山翔吾選手もみんなそういうバッティングをしていた。NPBではそれで結果を出してきたんですね。

 でも、MLBでは投手の球速がどんどん速くなっているうえに、ツーシームが主体で動いているから、その打ち方では真芯でとらえることも、ボールをしっかり打ち返すことも難しい。だから数字が残せないんですね。

 でも縦出しだと、バットの長い面のどこかにボールが当たれば、そのまま前に飛んでいく。それに、そんなに速いスイングを意識しなくても、しっかり振りぬければボールは飛んでいくんですね。この場合、手首を返すこともない。そのまま前に押し出すだけです。差し込まれてもバットを出して当てることができます。

 筒香選手、秋山選手も深いポイントでバットを縦出しする意識が早い段階で練習して習得出来ていたら、結果は違っていたと思います。

いやいや、アッパースイングじゃないんですよ

〈それは、アッパースイングと言うこと?〉

 いやいや、アッパースイングじゃないんですよ。ボールに当たってからバットを振り上げているわけじゃなくて、バットを縦に出してそのまま振るだけです。ボールが潜ってバットの下に当たってもそのまま縦に振れば前に飛んでいくじゃないですか。力もそんなにいらない。打球にどんな角度をつけるのかは、意識しなくてもいいんです。

 横出しのバットでも芯に当たれば打球は飛んでいきます。右打者なら真ん中から左、左打者なら真ん中から右に、鋭い打球が飛んでいきます。でも、右打者の右中間、左打者の左中間、いわゆる反対方向のホームランは横出しの打法では難しい。縦出しだとそういう当たりが出やすいんですね。

【次ページ】 大谷選手がメジャーで認められたのも…

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