酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「大谷翔平の“縦出し”お手本はトラウト」「吉田正尚ならMLBでも…」ラオウ杉本の覚醒を導いた3A経験者が語る“日米スイングの違い”
posted2023/01/14 17:01
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Nanae Suzuki
2022年は筒香嘉智、秋山翔吾と2人のNPBの強打者がMLB球団を退団した。率直に言えば、戦力たりえなかった。その一方で吉田正尚がボストン・レッドソックスと巨額の契約を結んだ。果たして日本の打者はメジャーで通用するのだろうか?
この問題を思うとき、筆者の脳裏には根鈴雄次氏の名前が浮かぶ。
杉本裕太郎を打撃開眼させた根鈴氏に聞く
根鈴雄次氏は法政大学を卒業後、単身渡米、エキスポズ傘下のスプリングトレーニングに参加。4番を打ち15試合で5本塁打を打って契約を勝ち取る。そのシーズンのうちにA、AAと昇格し、AAAオタワ・リンクスまで上った。その上はメジャーのエキスポズだ。チームメイトにはMLB2000本安打のオルランド・カブレラなどがいた。AAAでは大家友和から本塁打。これが北米初の日本人対決だった。日本人野手でマイナー契約からAAAまで昇格した選手は3人いるが、レギュラーとして中軸で活躍したのは根鈴氏だけだ。
惜しくもメジャー昇格はならなかったが、その後、アメリカ、メキシコ、カナダなどの独立リーグ、日本の独立リーグでもプレーし、引退後は横浜市に「アラボーイ根鈴道場」を開く。日本野球とは一線を画するメジャー流の打撃指導で注目されるようになり、近年は2022年日本シリーズMVPに輝いたオリックスの杉本裕太郎を打撃開眼させた指導者として知られる。
そんな彼に日米のバッティングの違い、日本人メジャーリーガー野手の展望など幅広く聞いてみた。
MLBはバッティングの作り方が変わってきている
〈日本とアメリカの「打撃の違い」は、ひとことで言えばどうなる?〉
そもそも、日本とアメリカは、アマチュアのときの最初の入り「バッティングはこうだ」っていうのが違うんですね。
NPBの秋季練習を見ていたら、昔、落合博満さんがやっていたように、ティーのボールの下面に45度の角度でバットを当てて、逆スピンをかけて飛ばす練習をしているんですね。
〈野球の教科書に書いてあるようなバッティングをやっているということ?〉
そうです。もちろん、NPBではそれで通用するのでしょうが、MLBはバッティングの作り方が変わってきているんですね。
日本のバッティングでは、バットの芯とボールの芯が当たらない限りいい当たりにならない。ずれて上面に当たったらゴルフのクラブの斜めのフェースに当たるようなもので、ポップフライになる。下面に当たればゴロです。バットの丸い断面の芯とボールの断面の芯を一致させて当てるのは、すごく難しいんです。
日本の打者はこの難しい技術を磨いてきた。
でも今のMLBで主流になっている打撃は全く異なります。バットを横から出して振るんじゃなくて、縦に出すんですよ。