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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
東洋大「山の神」の1年後輩、“走れなかった主将”が明かす“10年目の真実”「監督から“あそこでお前を使えていたらな“と」「河村亮アナが寮にきて…」
posted2023/01/09 11:01
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
Nanae Suzuki
本命・東洋大に忍び寄る“白い影”
迎えた第89回箱根駅伝で、東洋大は前評判通りの強さを見せる。
1区で2年生の田口雅也が区間賞、エース区間の2区と3区も設楽兄弟が区間3位、区間賞で続いた。だが4区で、当日変更で入った淀川弦太(2年)が区間11位と苦しみ、トップをキープしたものの、2位の日本体育大に1分49秒まで差を詰められてしまう。ペースを狂わせたのが、記憶に残るような強風だった。
箱根の山中にも寒風は容赦なく吹きすさび、この年は5区で低体温症などによって2人の棄権者が出ている。齋藤は往路当日、5区を走るランナーのサポートに回っていて、箱根の山中で今か今かと鉄紺の襷を身につけた定方俊樹(3年)が山を駆け上ってくるのを待っていた。
だが、真っ先に姿を現したのは、日体大の白いユニフォームだった。
「ギリギリまでテレビを見ていたので、定方が逆転されたのは知ってました。これまでは自分たちにとって山の5区は武器でしかなかったのに、ここで離されるのはこんなにも苦しいんだって。柏原さんの偉大さを身にしみて感じました」
齋藤の最後の仕事はアンカーの出迎え役
この年、5区の山登りで日体大の服部翔大(3年)が2位以下に2分近い差をつける圧巻の走りを披露した。東洋大の定方は区間10位で、このひと区間だけで4分28秒の差をつけられてしまう。
勢いに乗る首位日体大との差は2分39秒。早稲田大にも抜かれ、3位に転落した東洋大に、復路で巻き返すだけの力は残っていなかった。
復路にも3年連続で6区を好走していた市川孝徳(4年)や、前回8区で区間賞を獲得した大津顕杜(3年)らが控えていたが、前との差を詰めようと焦るあまりにペースが乱れ、経験値の差をいかせなかった。逆に、日体大は予選会からの出場だったが、先頭に立ってからは一度も逆転を許さず、史上稀に見る下剋上を成し遂げた。
齋藤の最後の仕事は、前の年にヒーローとなった場所である大手町で、アンカーの冨岡を出迎えることだった。チームは最終的に2位となったが、優勝した日体大との差は4分54秒。まさしく完敗だった。
今、改めてあの1年をどう振り返るのか。後悔はないのだろうか?