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宇野昌磨が異例の言及、「総合的な判断」「深夜発表」の代表選出はベストだったのか? 過去の選考理由を振り返ると…「全日本の成績」「次世代」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2022/12/29 11:02
世界選手権代表発表の会見、宇野昌磨(一番右)は選考方法に異例の言及。これまでのフィギュアスケートでの代表選考を振り返ると…
ただ、総合的な判断という方法自体が間違いとは言えない。
言えるのは、選考する人々の責任は、その分大きい、重いということ。そして、総合的な判断、という幅を持たせている以上、選考理由については明確に伝えられる必要があるということだ。むろん、選考基準については周知が図られていると思うが、選考後、第一に選手やコーチなどには、尋ねられれば、いやむしろ積極的に説明の限りを尽くすことが大切だ。疑問を持った選手やコーチ等が率直にそれをぶつけて、それを面倒くさがらずに受け止めて説明する、それも選考という重責を果たす一環であるし、そんな風通しのよい環境であれば、とも考える。
連盟にメディア側が選考理由の説明をリクエスト
外部に向けても同様だ。12月25日の代表発表会見では当初、発表のみで選考理由の説明がなかったため、会見後にメディア側が粘ってリクエストし、説明が行われた経緯がある。連盟は説明の場を設けようとはしていなかったが、前もって設定するべきではなかったかと思う。
全日本選手権が終了した当日夜に発表する形式であるため、その時間がないと考えたのかもしれない。そのフォーマットのままであれば選手も説明を受けることなくただ発表に臨むだけになるし、今回は23時少し前から発表会見が始まったように、深夜まで選手が拘束されることにもなる。当日夜の発表というあり方も改善の余地はあるかもしれない。
今回、宇野の発言をきっかけとして、議論を呼ぶことになった。その後の質疑応答で、「これ以上僕が言うことではないと思うので、今のいっときの感情で変なことを言うのはあれなので、今はコメントしないようにしたいと思います」と宇野は答えた。
発言の真意は、だから、分からない。ただ感じ取れたのは、自分自身のことではまず怒ることのない宇野は、「他」のこと、ためであれば本気になる人であるということだ。
他競技の選考を受けての会見では、よりはっきり不満が述べられたり、選手が批判するケースもあった。それらのケースを鑑みても、そうした発言をすること自体への違和感はないし、選手誰もがオープンに語れる環境は大切でもある。少なくとも宇野が考えを尽くしそれでも言葉にせざるを得なかった、その思いの真摯さと率直さは疑いようがない。
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