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「これっきりにしたい」全日本V、坂本花織が恒例のガッツポーズをしなかった理由「終わったときはきつくて…」「日本の未来は明るいな」
posted2022/12/27 11:04
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
最後のポーズを決めて演技が終わったあと、演じた内容からすれば不思議なほど、静かなたたずまいを見せた。手応えを感じる滑りだったはずだが、表情にも大きな喜びが表れることなく、何かをかみしめているようでもあった。
「終わったときはきつくて。いつもみたいにガッツポーズができる余裕がなくて」
準備してきたことを、もてる力を出し切ったからこそいつもと異なる演技後の振る舞いだった。
マイナスなき完璧な“世界最高得点”
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2022年12月24日、全日本フィギュアスケート選手権女子フリー。昨年に続き大会連覇を果たした坂本花織の渾身の演技は、まさにすべてを注いだ4分間だった。
22日のショートプログラムでは一切マイナスのない完璧な演技で77.79点、首位に立つ。
迎えたフリーも、圧巻の滑りだった。最初のダブルアクセルを、持ち味の高い跳躍で決めると、その後のジャンプも次々に成功させる。155.26点、合計は233.05点、終わってみればショート、フリー、合計、そのすべてで国際スケート連盟非公認ではあるが今シーズンの世界最高得点をマーク、しかもマイナスがショート、フリーのどちらにもつかない完璧な演技で試合を終えた。
「出し切った」演技のあと、得点を目にすると驚いたように表情が固まった坂本だったが、その後の取材の受け答えではいつもの明るい笑顔があった。
それは2週間前、イタリア・トリノで行われたグランプリファイナルとは対照的だった。ショートでトップになりながらフリーではジャンプのミスが相次ぐなどして、最終順位は5位に沈む。
得点が出るのを待つ間もショックの大きさをその表情に宿していた坂本は、取材の場で終始厳しい表情を浮かべた。涙はなかった。今まで悔しいときに涙を浮かべる姿が多かったことを考えても、涙も出ないことに、ショックの大きさが表れているようだった。
「フリーは最近、スピンやステップを抜いたりしないと最後まで滑りきることができないということがあったので、それを練習でやっていると、試合で最後まで続けられないとずっと感じていました」