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紀平梨花(20歳)が2年ぶりの全日本フィギュアで示した復活ロード「不運は自分で作ったもの」「来年は生まれ変わったような自分を…」
posted2022/12/29 17:02
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Asami Enomoto
「不運は自分で作ったもの。本当に身体が動ききっていた状態だったら、その不運があってもタイミングを合わせられた。そこに合わせられなかった自分があります。不運を寄せ付けないくらいの自分に持っていきたかったです」
右足首の疲労骨折から復帰し、2年ぶりの全日本選手権で11位となった紀平梨花(20)。ショートの連続ジャンプで、あるハプニングでミスしたことについて「不運は自分で作った」と語った。何が起きたのか、そしてなぜそう語ったのか。彼女が新たに手に入れた「強さ」を紐解いていく。
怪我さえ治れば…という自信
もう1年以上、右足首の怪我と向き合ってきた。昨季は全試合を欠場し、今季もまだ完治していない。有り余る才能に対して、あまりにも長いリハビリ期間。しかし今季、紀平は忍耐強く、全日本選手権までの4戦を戦ってきた。
今年5月から9月まで4カ月間は氷に乗らず、わずか2週間ほどの練習で、9月の中部選手権に出場。3回転はサルコウ1種類のみのジャンプ構成で、6位で通過した。無観客のローカル戦で、ブライアン・オーサーコーチは帯同していない。独りで飲料やストレッチマットを抱えながらリンクサイドに現れ、独りのキス&クライで「通過」を喜んだ。
「怪我さえ治れば(ジャンプを取り戻すのは)早いという自信があります」
どこか自立した空気がみなぎっていた。
10月のジャパンオープンはフリーの得点を伸ばし113.44点をマーク。そしてGP初戦となったスケートカナダ(10月29-30日)では、早くもフリーで「3回転を3種類5本」入れ、合計184.33点での5位。オーサーコーチは思わず「Amazing!」といってハグした。
順調な回復と全日本選手権への期待
さらに1カ月後のGPフィンランド大会(11月25-26日)が圧巻だった。ショートでは「3回転サルコウ+3回転トウループ」を降り、片手側転も復活。フリーは、3回転フリップを投入して「4種類6本」の構成にまで戻したのだ。192.43点の4位で表彰台に迫り、復活を印象づけた。
「フリーは、フリップは練習では良いものが跳べているので、練習どおり跳ぼうと考えて、集中して臨みました。スケートカナダまでは試合に出られること自体に嬉しい思いがあったけど、もっと上を目指したいという思いが強くなってきました」
順調な回復は、年明けの世界選手権や四大陸選手権への派遣も期待させた。しかし昨季の実績がない紀平の場合、全日本選手権で上位に入ることが必須だった。