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“甲府20年目で初タイトル”山本英臣に聞く天皇杯決勝のPK戦秘話「ハンドはするしコイントスは負けるし、逆に笑えてきたんです」 

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澤田将太

澤田将太Shota Sawada

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photograph by2022VFK

posted2022/12/27 11:07

“甲府20年目で初タイトル”山本英臣に聞く天皇杯決勝のPK戦秘話「ハンドはするしコイントスは負けるし、逆に笑えてきたんです」<Number Web> photograph by 2022VFK

天皇杯決勝のPK戦に臨むヴァンフォーレ甲府の山本英臣。「決めれば優勝」という状況のなか、どんな心境で5人目のキッカーを務めたのだろうか

ルヴァンカップ決勝は「心から広島を応援しました」

 J2で下位に沈むヴァンフォーレ甲府が、名だたるJ1クラブを撃破して頂点に立つ。しかも最後に勝負を決めたのは、延長戦でPKを与えて一時は絶望にまみれたクラブ在籍20年目のレジェンドだ。映画のようなストーリーに、ACL出場権の関係上、広島を応援していたはずの鹿島アントラーズやセレッソ大阪、柏レイソルのサポーターも拍手を送った。SNSではマスコットのフォーレちゃんが泣き崩れるシーンも拡散された。

「あんなに盛り上がるとは思わなかったですね。山梨県での視聴率は相当高かったと聞きました。僕宛にもLINEが300件以上、ショートメールも200件くらい届いて、正直もう開くのが怖かったです(笑)。いろいろと悩みはあったけど、ずっとサッカーをやってきてよかった。続けていれば、こんなにいいことがあるんだなって……。本当に報われました。繰り返しになりますが、優勝は僕の力ではなくて、みんなに連れてきてもらったおかげです。チームメイト、スタッフ、サポーター、家族には、どれだけ感謝しても足りないですね」

 ドラマには続きがある。甲府に敗れた広島は、その1週間後にセレッソ大阪とルヴァンカップ決勝戦を戦い、後半アディショナルタイムの2得点で劇的な逆転優勝を果たした。死闘を繰り広げた相手に、山本は特別な感情を抱いていた。

「甲府でチームメイトだった佐々木翔には、天皇杯の後に『勝てると思いすぎだよ』って言っときました(笑)。でも、ルヴァンの決勝は心から広島を応援していた。佐々木のミスが絡んで失点したときは、ハンドをした自分と重なって辛かった。あれだけチームに貢献している選手なのに、悔しいじゃないですか。だからアディショナルタイムで逆転したときは本当に嬉しくて、セレッソさんには申し訳ないけど『物語が完結したな』と思いました」

【次ページ】 “ジェフ時代の後輩”阿部勇樹への感謝

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