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有馬記念を完勝、イクイノックスは“実際どこが強かったのか”、徹底検証! ルメールも調教師も絶賛「世界のホースマンに見てもらう価値のある馬」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byPhotostud
posted2022/12/26 17:01
12月25日の有馬記念を完勝したイクイノックス。“天才”がその強さを見せつけたレースだった
そう振り返ったように、2周目の向正面で馬が行きたがり、ルメールは重心を後ろにしてずっと手綱を引いていた。こうしてエネルギーを小出しにしてしまうと、最後の爆発力の低下につながりかねないので心配されたが、3コーナーに入ってもまだ掛かり気味だった。しかし、そこから先で前への強い推進力を見せることは、すなわち、引っ張りきれないほどの「抜群の手応え」となるわけだから、大歓迎だ。
掛かったことによってエネルギーを無駄遣いしたのかもしれないが、それでも、直線で見せた瞬発力は凄まじかった。ゴールまで7、8完歩のところで鞭を持ち替えたルメールが後ろを振り返り、十分な差があることを確かめてから、流してゴールしたほどの完勝だった。余力を残してつけた2馬身半の差は、決定的なものだった。この強さは、普通ではない。
馬体に緩さが残るぶんしなやかで、適当な譬えかどうかわからないが、よくしなる鋼の鞭のようなイメージの馬だ。
「世界のホースマンに見てもらう価値のある馬」
次走に関する発表はなされていないが、来年4月2日の大阪杯、6月25日の宝塚記念などがターゲットになるのだろうか。
共同会見でベストの距離を問われたルメールは、笑って「2200m」と答えていたが、それは2500mで掛かってヒヤヒヤしたからだろう。
「キタサンブラックの仔ですから、クラシックのときはまだ大人じゃなかった。この秋からすごく強くなりました。来年も楽しみです」
これだけ能力が高く、強い前進気勢があれば、「同じ競技だが別の種目」と言われる凱旋門賞の舞台となる、パリロンシャン競馬場の2400mもこなしてしまうのではないか。
力の要る馬場への適性のある馬を送り込むか、あるいは、日本より時計が10秒ほど遅くても対応したほど絶対能力の高かったエルコンドルパサーやオルフェーヴルのような「化け物級の馬」で挑むかしかないわけだが、この馬はその域に達しつつある。
木村調教師は「個人的な意見ですが、世界のホースマンに見てもらう価値のある馬だと思います」と話し、ルメールも「どこにでも行けます」と自信を見せている。
どんなローテーションを歩むにしても、楽しみだ。