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「週4回練習で心にゆとり」「選手選考もすべて部員に任せて」広島皆実の“高校サッカー指導改革”「それが日常になり文化になれば…」
text by
加部究Kiwamu Kabe
photograph bykoko-soccer.com
posted2022/12/28 17:02
全国高校サッカー選手権に出場する広島皆実高校。いわゆる「ボトムアップ方式」が根付いている
「私自身がサッカーを観たり、選手や組織について考えたりする時間が増えました。選手たちからも、やりたいからやるという姿勢が強まり、だいぶケガ人も減りました。やはりどうしても選手は疲れていても無理をしてしまうので、どちらかと言えばブレーキをかける声かけをすることの方が多いですね」
高校2年時に1度だけ畑監督に酷く怒られたことがある。既に当時から試合に出ていたので、どこかで100%を出し切っていないところがあり、しっかりと見抜かれた。
「そんなんじゃダメだ。来年おまえには10番を任せる。自覚を持ってチームを引っ張っていくつもりでやるんだ」
ハッとして、その日から心を入れ替えた。
逆に大学時代には、トップダウンによる一方通行の指導に悩んだ。
「もっとこうしたら良いのに……、と思っても受け入れられず、サッカーに向き合えなくなり『早く指導者に』と考え始めました。それがなければ、社会人になってもプレーを続けていたと思います」
せっかく大好きで始めたサッカーを、上から押しつける指導で挫折して欲しくない。しっかりと最後まで夢を育み続けて欲しい。そう考えて、教育の世界に身を投じた。
日常になり文化になれば、ボトムアップという言葉も…
全国選手権で初戦の相手は、前回覇者の青森山田。しかし選手たちは、大きな山を乗り越えて国立競技場でのプレーを目指している。
「伝統の守りに加えて、新しい皆実を作るために、今年は攻撃を工夫して強化して来ました。しっかりとゲート(相手の選手間)にボールを通し、3人目4人目が絡んで動き続ける。いかに失点を減らしながら、自分たちの時間を作れるかがカギになると思っています」
だがその先には、サッカーを通じた人間形成という壮大な夢がある。
「まだまだ試行錯誤が続きますが、いつかは自分なりにボトムアップ方式を進化させていきたい。選手(生徒)が主体的に判断して行動していく。それが日常になり文化になれば、ボトムアップという言葉も必要なくなりますからね」
関わる生徒たち全てが自立した立派な社会人になる。その夢は恩師である畑監督とも共有し、しっかりと引き継いでいる。
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