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メキシコ生まれの“オーウェン2世”。
エルナンデスがマンUを優勝に導く! 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2011/02/04 10:30

メキシコ生まれの“オーウェン2世”。エルナンデスがマンUを優勝に導く!<Number Web> photograph by AFLO

1月4日のストーク・シティ戦でゴールを決め、エンブレムにキスをするエルナンデス。メキシコ代表としても活躍しており、南アW杯でも2得点を挙げた

全盛期のオーウェンを凌駕する“チーム最高”の快足。

 元リバプールの「小さな大エース」は、マンUのチームメイトとして半年間を共にしてきたエルナンデスについて、次のように語っている。

「誰に似ているかと訊かれれば、自分、と答えるね。2人とも生粋の『点取り屋』だと思うから。僕らには、ペナルティエリアの外からゴール上隅にシュートを決めるような得点がほとんどない。やろうと思えばできるけど、自分たちにとっては自然なプレーではないんだ。ボックス内こそが、僕らのいるべき場所。ゴールへの嗅覚は教えられて身につけるものではないけど、彼は間違いなくそれを持っている。今後の成長が自分のことのように楽しみだよ」

 オーウェンと言えば「快足FW」のイメージが強いが、エルナンデスのスピードは、アレックス・ファーガソン監督いわく「チーム最高」だ。31歳のオーウェンとの比較には無理があるかもしれないが、W杯での公式データを見ても、エルナンデスが昨年の南ア大会で記録した時速約32キロのトップスピードは、若かりし頃のオーウェンがフランス大会で記録した約25キロを上回っている。前述のブラックプール戦では、オフサイドトラップを破って飛び出すと、目の前で身を投げるGKの脇の下を抜いて冷静に同点ゴールを決めた。ベンチで見守っていたオーウェンが、全盛期の自分の姿を重ねたとしても不思議ではない得点シーンだった。

「僕はヒーローなんかじゃない。毎日、汗を流して学ぶだけさ」

 もちろん、駆け出しのエルナンデスにとって、リバプール時代に2年連続でリーグ得点王に輝いたこともあるオーウェンは遠い目標だ。だが、先輩も期待している成長を遂げるための下地は十二分にある。実戦を通して若手を育てることにかけて、マンUの実績はプレミアでも随一だ。そしてエルナンデスには、才能と同じくらい大切なひたむきさがある。マンU移籍のきっかけは昨季の母国リーグで決めた21得点だが、その前年まで、エルナンデスはベンチ生活と下部リーグへのレンタルを繰り返していた。元メキシコ代表選手を父親に持ちながらも、プロを諦めて大学進学を考えていたという数年前を本人は忘れていない。

 プレミアの舞台で価千金のゴールを決めてチームを救っても、「僕はヒーローなんかじゃない。毎日、汗を流して学ぶだけさ。これからもずっとマンUの選手でいられるようにね」と言うエルナンデス。いつの日か、「ビンテージ」と聞いて人々が思い浮かべるマンU像には、メキシコ産の点取り屋の姿が含まれるようになるかもしれない。

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