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メキシコ生まれの“オーウェン2世”。
エルナンデスがマンUを優勝に導く! 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2011/02/04 10:30

メキシコ生まれの“オーウェン2世”。エルナンデスがマンUを優勝に導く!<Number Web> photograph by AFLO

1月4日のストーク・シティ戦でゴールを決め、エンブレムにキスをするエルナンデス。メキシコ代表としても活躍しており、南アW杯でも2得点を挙げた

 後半戦に入って約ひと月が過ぎたプレミアリーグ。巷では、マンチェスターUの優勝を確実視する声が高まっている。

 1月25日のブラックプール戦では、前半で2点をリードされて今季初黒星を喫するかに思われたが、終わってみれば3対2の勝利。その勝負強さは、攻撃力と精神力を武器に逆転勝ちも珍しくはなかった、1990年代の黄金期すら髣髴させる。色褪せぬ魅力を持つスタイルでポイントを重ねるマンUを、国内のメディアが“ビンテージ”という言葉で讃える頻度も増えてきた。

 栄光の往時を偲ばせる現在のチームだが、ある“フレッシュ”な戦力の存在を軽視することはできない。昨夏にメキシコからやって来たストライカー、ハビエル・エルナンデスである。プレミア1年目の22歳は、移籍後の全25試合で既に10得点をあげている。しかも、その半数がチームにポイントをもたらす重要なゴールなのだ。

 特に、昨年10月のリーグ戦4試合での3得点には大きな意味があった。

 当時のマンUは、プレミアでチェルシーの後塵を拝していた。エースのウェイン・ルーニーは不振だった上に移籍騒動を巻き起こし、ディミタル・ベルバトフも調子を落として無得点に終わる試合が続いていた。エルナンデスのゴールがなければ、チェルシーを追走し続け、翌月に首位の座を奪うことは難しかったに違いない。

オーウェンにも重なる、不可能を可能にするゴールへの嗅覚。

 エルナンデスの能力は、その10月にガードの堅いストークから勝利(2-1)を奪ったパフォーマンスを見れば明らかだ。前半には、ゴールに背を向けたまま後方へのヘディングで先制点を決めた。上背はないが助走なしでもDFに競り勝つ跳躍力、ジャンプのタイミングの良さ、そして首の筋力も見事だが、シュートは不可能と思われた混戦状態の中で生まれた“即興ゴール”は、天性の得点感覚を持つ者ならではの業だろう。

 同点に持ち込まれて迎えた終盤には、チームメイトが蹴り損なったシュートを至近距離から枠内に押し込んだ。拾い物のゴールのように見えるが、相手CB2名の隙間に入り込み、万が一のチャンスに備えたFWとしての姿勢があればこその決勝点だったと言える。

 ゴール前での“必殺”ぶりは、'90年代後半のマンUで「童顔の暗殺者」の異名をとったオレ・グンナー・スールシャールにも匹敵する。加えて、ユニフォームの背中にもある“チチャリート(小さなエンドウ豆)”という可愛らしいニックネームといい、女の子のような目鼻立ちといい、スールシャールの後継者としては御誂え向きに思える。だが、エルナンデスが目指すべきは、かつてのスーパーサブではなく、同時期にプレミアを代表するストライカーとして活躍していたマイケル・オーウェンだろう。

【次ページ】 全盛期のオーウェンを凌駕する“チーム最高”の快足。

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