熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
〈W杯日本とモロッコ大躍進〉本当に「アジアとアフリカは強くなったのか?」過去大会データとGS突破率を比較してみると…
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byKiichi Matsumoto,kazuo Fukuchi/JMPA
posted2022/12/13 17:22
日本代表とモロッコ代表がカタールW杯のサプライズ枠になったことは間違いない
ちなみに、アラブ諸国でW杯に出場したことがある国はアルジェリア、エジプト、カタール、サウジアラビア、チュニジア、モロッコで、いずれもフットボールが国内で非常に人気のある競技である。
<アラブ諸国のGS突破率>
1998年:出場3カ国/突破率0%
2002年:出場2カ国/突破率0%
2006年:出場2カ国/突破率0%
2010年:出場1カ国/突破率0%
2014年:出場1カ国/突破率100%(アルジェリア)
2018年:出場4カ国/突破率0%
2022年:出場4カ国/ 突破率25%(モロッコ)
(合計)出場計17カ国/突破率12%(2カ国)
一方、GSを突破した16カ国に占める宗教別の割合も調べてみた。
1998年:キリスト教100% イスラム教、仏教、混在0%
2002年:キリスト教75% イスラム教13% 仏教、混在各6%
2006年:キリスト教100% イスラム教、仏教、混在0%
2010年:キリスト教88% イスラム教0% 仏教、混在各6% 無宗教0%(北朝鮮)
2014年:キリスト教88% イスラム教、混在各6% 仏教0% 無宗教0%
2018年:キリスト教94% 仏教6% イスラム教、混在0% 無宗教0%
2022年:キリスト教75% イスラム教13% 仏教・混在各6% 無宗教0%
(合計):キリスト教88% イスラム教4% 仏教4% 混在4% 無宗教0%
なお「キリスト教」には、カトリック、プロテスタント、ロシア正教、ギリシャ正教などの各宗派を含む。トルコを除く欧州諸国、北中南米諸国のほとんどが該当し、アフリカではガーナ、トーゴ、アンゴラを含めた。セネガルはイスラム教に分類した。
複数の宗教の信者数が拮抗している場合は「混在」とし、韓国、コートジボワール、ナイジェリア、カメルーンをこのカテゴリーに入れた。中国と北朝鮮は「無宗教」、日本は仏教国とみなした。直近7大会の参加国の中で仏教国は日本だけ。このため、日本がGSを突破したときは100%、敗退したときは0%という極端な数字となっている。
今大会での躍進は事実。継続した強さなのかは…
これらの数字を見ると、今大会でアラブ諸国、イスラム教国が躍進したのは事実だ。しかし、これらの国が本当に強くなったのかどうかは今後の大会での成績を見ないとわからない、と考えるのが妥当だろう。
ちなみに、ラウンド16ではアジアの日本、韓国、オーストラリアが揃って敗退。アフリカの国でイスラム教国のセネガルも、イングランドに0-3と完敗。結局、アジア、アフリカ、アラブ諸国、イスラム教国の中で準々決勝へ勝ち上がったのはモロッコだけだった。
過去の大会のデータと突き合わせると、アフリカからほど近い中東のアラブ諸国にしてイスラム教国であるカタールで開催された今大会でアジア、アフリカ、アラブ諸国、イスラム教国がこれまでの大会より優れた成績をあげたのはロジカルな結果であり、これらの国が急速に強くなったと言い切るのは時期尚早だろう。
本当に強くなったことを証明するためには、継続して強化を行ない、今後の大会でさらなる好成績を残す必要がありそうだ。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。