熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
〈W杯日本とモロッコ大躍進〉本当に「アジアとアフリカは強くなったのか?」過去大会データとGS突破率を比較してみると…
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byKiichi Matsumoto,kazuo Fukuchi/JMPA
posted2022/12/13 17:22
日本代表とモロッコ代表がカタールW杯のサプライズ枠になったことは間違いない
アジアからは過去最多の3カ国(日本、韓国、オーストラリア)が、アフリカ、イスラム教国としてはモロッコとセネガルが、アフリカ、アラブ諸国、イスラム教国としてはモロッコがベスト16に食い込んだ。
ジャイアントキリングを起こしたのは、まさにこれらの国々だ。サウジアラビアがアルゼンチンを、日本がドイツとスペインを、韓国がポルトガルを、モロッコがベルギーを倒したことは世界を驚愕させたし、イランがウェールズを倒せば、相手は事実上のBチームではあったが、チュニジアがフランスを、カメルーンがブラジルを下した。
また、モロッコに限らず、中東、アフリカ、アラブ諸国、イスラム教国から観戦にやってきたファンが目立つ。これは、距離的に近いことに加えて宗教、言語、気候、文化などの点で共通点が多いからだろう。
これらの要素が選手たちの心身のコンディションにも影響を与え、アジア、アフリカ、アラブ諸国、イスラム教国に有利に働き、逆に言えば欧州、南米、北中米の国に不利に働いたとも考えられる。
ロシアW杯と今大会のGS突破率を調べてみると
このような印象を数字で検証してみたいと考え、まず2018年ロシア大会と今大会の大陸別のGS突破率を調べてみた。
南米:80%→50%
欧州:71%→62%
北中米:33%→25%
アジア・オセアニア:20%→50%
アフリカ:0%→40%
アジア・オセアニアとアフリカの突破率が、いずれも前大会に比べて激増している。欧州が横ばいで、南米と北中米は落ちている。カタールから近いほど成績が良く、遠いほど悪い、というイメージだ。ベスト16の大陸別内訳は、欧州が8(50%)、アジアが3(19%)、南米とアフリカが各2(13%)、北中米が1(6%)となった。
とはいえ、今大会のこの結果をもって「アジア・オセアニアとアフリカが強くなった」と言い切れるのかどうか。日本がW杯に初出場した1998年以降の7大会における「開催国が属する大陸」のGS突破率を確認した。
1998年=欧州(フランス):67%
2002年=アジア(日本&韓国):50%
2006年=欧州(ドイツ):71%
2010年=アフリカ(南アフリカ):17%
2014年=南米(ブラジル):83%
2018年=欧州(ロシア):71%
2022年=アジア(カタール):50%
今大会におけるアジアの突破率が突出して高いわけではない。アフリカもカタールから近い“準開催大陸”とみなすと、「アジア・オセアニアとアフリカが強くなった」と考えるのは早計ではないか。
アラブ諸国が強くなっているというイメージは正しいのか
それでは、「アラブ諸国やイスラム教国が強くなっている」というイメージは正しいのだろうか。日本が初めて出場した1998年以降に出場した各国のデータを取ってみた。