熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
〈W杯日本とモロッコ大躍進〉本当に「アジアとアフリカは強くなったのか?」過去大会データとGS突破率を比較してみると…
posted2022/12/13 17:22
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Kiichi Matsumoto,kazuo Fukuchi/JMPA
ベルギー、クロアチア、カナダと同居した困難なグループを2勝1分の首位で突破したモロッコが、ラウンド16で強豪スペインを延長、PK戦の末に倒すと、準々決勝でも難敵ポルトガルを1-0で撃破して準決勝へ進出。アフリカ勢、アラブ諸国(母国語としてアラビア語を使用する人々が多く住む中東、西アジア、アフリカの国)として初、イスラム教国(国民の多くがイスラム教を信仰する国)としては2002年大会のトルコに次ぐ2度目の快挙を達成した。
6度目の出場で、世界ランキングは22位。ベスト16に到達したのは1986年以来36年ぶり2度目で、人口約3700万人は日本の30%程度。日本は7度目の出場にして初の2大会連続となる4度目のベスト16入りを成し遂げたが、その日本でも長い間、夢見ていながら辿り着けないでいる場所に先着して“新しい景色”を眺めたばかりか、さらにその先まで到達したとあって、国中が大騒ぎになっている。
ベスト8進出に限っても、アフリカの国としては1990年大会のカメルーン、2002年大会のセネガル、2010年大会のガーナに次いで12年ぶり4度目、アラブ諸国としては史上初、また国民の多くがイスラム教を信仰する国としては2002年大会のセネガルとトルコに次いで20年ぶり3度目の快挙だった。
モロッコは想像以上に“中東との距離感”が近い
僕は昨年9月にモロッコ各地を駆け足で旅行し、首都ラバトで民泊させてもらったモロッコ人の中年夫婦とその後も時折、メッセージを交換している。
モロッコ最大の人気スポーツはフットボールで、国中、至るところで子供も大人もボールを蹴っていた。この夫婦もフットボールが好きで、グループステージ(GS)で日本がドイツ、スペインを倒すと直後にお祝いのメッセージをくれた。お返しに、僕もモロッコが勝つ度に祝福の言葉を送っている。
夫婦は熱心なイスラム教徒で、「これまでメッカ(サウジアラビア西部にあるイスラム教の聖地)へ3度、巡礼に行った」。カタールはそのサウジアラビアの隣国だ。
モロッコ最大の都市カサブランカからドーハまでは直行便で7時間程度と、「いつでも行ける距離」。モロッコ対スペイン戦の観衆のほとんどがモロッコのサポーターだったそうで、中東とアフリカは一般の日本人が想像するよりずっと近い。
モロッコだけでなく日本、韓国、サウジも番狂わせ
今大会は「アジアとアフリカならびに、アラブ諸国、イスラム教国が躍進した」というイメージがある。