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名将エディー・ジョーンズが電撃解任…ラグビーW杯まで9カ月なのになぜ? 協会による“冷酷な聞き取り調査”と“観衆8万人のブーイング”
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph byItaru Chiba
posted2022/12/10 17:03
イングランド代表HCを解任されたエディー・ジョーンズ。11月には日本に大勝したが、不振に終わった秋の結果が大きな要因とされている
ラグビーやサッカーなどのスポーツに限らず、イギリスのメディアは日本に比べて遥かに辛辣な目線で記事を書き立てる。日本のスポーツ記者たちからすれば、15年W杯の「ブライトンの奇跡」の仕掛け人として今も敬意を向けられる存在だろうが、イングランドの記者たちにとっては19年W杯準優勝の輝かしい戦績はすでに遥か昔のこと。相手がどこであろうと、勝っても負けても常にエディーに対して批判の糸口を探し出そうとするやりとりは、スパーリングと表現される。
必死にネガティブな質問を探す記者に対し、エディーはウィットに富んだジョークで会見場に笑いを誘ってきたが、時に真っ向から「そういうバカな質問をするのは止めたらどうですか? あなたもプロでしょう?」とカウンターパンチを見舞うこともあった。
話題の提供ぶりで言えば誰にも負けないエンターテイナーだったが、記者とのやりとりは必ず多勢に無勢となり、主要メディアの記事を読んだファンたちがソーシャルメディアでその声を更に拡大させた。南アフリカ戦に敗れた後の大ブーイングの背景には、こうした現世代のファンの声もあったのだ。
ストイックな姿勢は“敵”をつくる結果に
エディーはシーズンオフの時間もラグビー指導者としての腕を磨くことに多くの時間を費やすことで知られている。サッカー、13人制のリーグラグビー、ホッケー、柔道、サイクリングなど、あらゆるスポーツの指導者や選手たちと交流を深め、とにかくコーチとしての自分を高めることに時間を惜しまない。
その一方で、ここまで仕事熱心な上司を持つアシスタントコーチたちは短期間で多くの事を学ぶと同時に、あっという間に疲れ果て去っていく事例もあった。日本代表でも協働したスティーブ・ボーズウィックやスコット・ワイズマンテル、現在日本代表のディフェンスコーチを務めるジョン・ミッチェルら、エディー政権下のアシスタントコーチやチームスタッフを辞めた人物が数多くいるのは事実で、代表スタッフの離職率が高いというのは、RFUからしても由々しき問題だったのだろう。
また、代表チームの戦術や起用法に疑問を唱えた選手が、その1発で2度と代表に呼ばれなくなったという例もあった。そんな背景から、このオータムネーションズシリーズ後に行われたRFUのパフォーマンスレビューでは、匿名を絶対条件として過去にプレーした選手、コーチ陣、さらには現代表選手・コーチ陣まで意見を述べる機会が設けられた。冷酷無比なRFUらしいやり方である。