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名将エディー・ジョーンズが電撃解任…ラグビーW杯まで9カ月なのになぜ? 協会による“冷酷な聞き取り調査”と“観衆8万人のブーイング”
posted2022/12/10 17:03
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph by
Itaru Chiba
現地時間12月6日、サッカーW杯の話題が大半を占めるイギリスの各スポーツメディアのトップページに衝撃のニュースが掲載された。
ラグビーイングランド代表、エディー・ジョーンズHC解任。イングランドラグビー協会(以下、RFU)が発表したニュースは、2023年W杯フランス大会まであと9カ月という状況での大胆な方向転換だった。
すべてはW杯での栄光のため――代表監督の仕事を4年1サイクルのプロジェクトとして強化を進めてきたエディー。毎年2月から3月に行われるシックスネーションズ(欧州6カ国対抗戦)などで結果が伴わない時も、「W杯でチームをピークにもっていくための世代交代」「W杯に向けて戦術のオプションを試している時期」という理由で、解任の憂き目を逃れてきた。
だが、今回はそうはいかなかった。昨年からオータムネーションズシリーズと呼ばれている秋の代表戦の後にRFUが行ったパフォーマンスレビューによって、解任が決定された。
南アに完敗…観衆8万人から大ブーイング
解任劇の背景には、1勝2敗1分に終わったオータムネーションズシリーズの結果がある。
日本のラグビーファンの間では、エディー率いるイングランドとの聖地トゥイッケナムでの一戦に大きな期待と注目が集まっていたはずが、現地のファンたちにとっての目玉は3戦目のニュージーランド戦と、4戦目の南アフリカ戦だった。いわば初戦のアルゼンチンと日本戦は勝って当たり前と目されていた。
特に後者の2カ国はW杯の予選プールでも対戦が決まっていることから、エディーは今回のシリーズを「ミニワールドカップ」と呼んできた。だが、そんな本番を想定した大事な初戦でアルゼンチンに29-30と惜敗。日本には52-13と実力差を見せつけたものの、現地では「アルゼンチンにすら勝てなかった」という批判の声が相次ぐことになった。
続くニュージーランド戦は奇跡的とも言える“ラスト10分前の奮闘”により25-25とドロー決着に持ち込んだが、4戦目の南アフリカ戦は13−27と完敗。精彩を欠いた試合に対し、8万人を超える観衆は大きなブーイングを発する異例の雰囲気となった。
振り返れば、夏のオーストラリア遠征も初戦を落とした後に2連勝して何とかメンツを保っていたが、その前のシックスネーションズでは2勝3敗の3位だったことで、凄まじい批判の嵐が起こっていた。観る人たちも2023年へ向けて不信感を募らせていたことは間違いない。
明らかに不振に終わったイングランド代表の2022年の戦績は5勝6敗1分。この年間戦績は、4勝7敗という記録的な不振に終わった08年以来の絶不調で、結果的にRFUが監督解任という冷徹な判断を下す大きな要因となってしまった。