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山本草太の活躍に、宇野昌磨は“祝福の微笑み”を投げた…佐藤駿に三原舞依らも初出場、トリノGPファイナルが“日本の特別な大会”になる理由
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAsami Enomoto
posted2022/12/07 11:03
NHK杯での山本草太。グランプリファイナルでの活躍も期待される
佐藤駿へ、ライバル鍵山優真からのエール
もう一人はシェフィールド大会で3位、そして最終戦のフィンランド、エスポー大会で2位になった佐藤駿である。佐藤は2019年トリノGPファイナルでは、ジュニア男子のフリー歴代最高点を更新して、サプライズの優勝を果たした。
このGPファイナルでも、また2020年3月にタリンで開催された2020年世界ジュニア選手権でも、佐藤は良きライバルで仲の良い友人でもある鍵山優真とずっと一緒に行動していた。後ろから見るとまるで双子のようだった彼らは、翌年一緒にシニアに上がった。
だが佐藤はシニアGPデビューとなった2021年スケートアメリカで、公式練習中に転倒して左肩を脱臼。北京オリンピック代表選考がかかっていた全日本選手権では7位に終わり、世界ジュニア選手権の出場も怪我の影響で辞退することになった。
シニアとして一歩も二歩も先に結果を出していた鍵山は、今季は負傷でGPシリーズを欠場となり、復帰をかけて臨む佐藤に「GP大会頑張って」と励ましの言葉をかけたという。
3年前にはジュニアとして赴いたリンクに、今度はシニアとして佐藤が向かう。
「ジュニアGPの時に一度滑ったリンクなので、思い出の深いリンクかなと思っている。そこにまた行けるということで、また良い演技ができるように頑張っていこうと思います」
三原舞依は堂々トップでファイナル進出
女子ではシニアGPデビューして7シーズン目のベテラン、三原舞依が初めてファイナル進出を果たした。ジュニアから上がったばかりの2017年には四大陸選手権で優勝するほどの実力がありながら、2019/2020年には病気で体調を崩して、競技生活が中断しこれまで2度のオリンピックの代表を惜しいところで逃してきた。
GPシリーズも4位という結果が何度も続いたが、今年はシェフィールド大会、エスポー大会で2連勝。女子の中で唯一、2大会優勝して30ポイントを手に堂々とトップで進出を果たした。
「ファイナルに進むことができるのは今シーズンの目標に掲げていたことの1つなので、すごく嬉しいです」と喜びを口にした三原。
「今後の自信にもつなげたいと思っていますし、ファイナルではもっともっとレベルを上げたプログラムをできるようにしたい」。エスポー大会の会見でそうコメントした。
同じ門下生で良きライバルの坂本花織、初進出の渡辺倫果とも直接対決となり、全日本の前哨戦にもなりそうだ。
山本、佐藤、三原とも、本来だったらもっと早くにGPファイナルに到達していた実力の選手たちである。不調を乗り越え、諦めずに努力を続けて再びトップの大会に返り咲いた彼らがトリノでどのような戦いぶりを見せてくれるのか、楽しみに見守りたい。