フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
山本草太の活躍に、宇野昌磨は“祝福の微笑み”を投げた…佐藤駿に三原舞依らも初出場、トリノGPファイナルが“日本の特別な大会”になる理由
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAsami Enomoto
posted2022/12/07 11:03
NHK杯での山本草太。グランプリファイナルでの活躍も期待される
SP「イエスタデイ」の歌詞は山本ともリンク
宇野と山本の二人が前回一緒にファイナルに赴いたのは、8年前の2014年12月。スペインのバルセロナで開催されたGPファイナルのことだった。二人ともまだジュニアで、宇野が優勝を果たし、山本が2位だった。
その翌シーズン、宇野はシニアに上がり、山本は再びバルセロナで開催されたジュニアGPファイナルで、ネイサン・チェン、ディミトリ・アリエフに次いで3位。その年明けにはユースオリンピックで優勝し、世界ジュニア選手権では有力な優勝候補だった。だがその大会に出発する日の練習中、右足首を骨折して棄権となった。2カ月後にようやく氷の上に戻ったが、練習を再開してから今度は右足首の内側を疲労骨折。結局合計3度の手術を受け、本来の滑りを取り戻すのに長い年月がかかった。
今季の山本のSPは、昨シーズンから継続したビートルズの「イエスタデイ」。当時振付を担当した樋口美穂子コーチが、これまでの山本の経験と重ねて選んでくれたものだという。「昨日まで、トラブルなんて遠くのことだと思っていたのに、今はそれが目の前にあって、ずっと居座っているみたい」という出だしの歌詞。それは絶好調だったジュニアの当時、いきなり大きな負傷で活動を中断させられた山本には心に響く歌詞だったのに違いない。
「(昌磨君と)また同じ試合に出れることがすごく嬉しい」
自分のすぐ前を歩いていた先輩の宇野は、シニアに上がって何度も世界選手権メダルを手にし、2018年、2022年と2大会連続でオリンピックメダルを獲得。その間、山本は試合に復帰しながらもなかなか結果が出せなかった。
そんな山本の苦しみをわかっていたからこそ、宇野は目を輝かせて彼の表彰台を祝福したのだろう。
「ジュニアの頃は昌磨君とジュニアGPだったりファイナルだったり、一緒に出場させていただいたんですけど、まだシニアに上がってから、僕はGPシリーズで全然結果を出せていなかったので、また同じ試合に出れることがすごく嬉しく思っています」
山本は、記者会見でそう語った。