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ヤマハのエースが契約破棄する価値があった「アプリリアの躍進」と「日本メーカーの凋落」《来季MotoGPの日本メーカーは6台のみ!》 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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posted2022/11/30 11:00

ヤマハのエースが契約破棄する価値があった「アプリリアの躍進」と「日本メーカーの凋落」《来季MotoGPの日本メーカーは6台のみ!》<Number Web> photograph by Satoshi Endo

アプリリアに移籍したビニャーレスが、初めて表彰台に上った2022年の第11戦オランダGPでの走り

 2021年のシーズン途中、ヤマハのエースだったマーベリック・ビニャーレスが翌年まであった契約を解消し、2022年からアプリリアに移籍することを発表して誰もが驚いた。その時点では、コンストラクターズ最下位チームへの移籍だったからだ。

 2017年からヤマハで戦ってきたビニャーレスだったが、バレンティーノ・ロッシというスーパースターにリザルトで勝ってもヤマハのナンバー1になれなかった。そのロッシがサテライトチームに移った2021年には、ファビオ・クアルタラロという強いライダーが登場してナンバー2に甘んじる屈辱を味わった。ヤマハでのタイトル獲得も夢ではなかったビニャーレスだが、「ああ、これでビニャーレスは終わったな」と誰もが思ったに違いない。

 しかし、急ピッチでマシン開発を進めてきたアプリリアにとって、「チャンピオンマシンに乗っていた勝てるライダー」の獲得は大きなチャンス到来となった。2022年は優勝こそなかったが、ビニャーレスは3回の表彰台に立って総合11位。マシン開発への貢献度においてはリザルト以上に存在感を発揮した1年だった。

2023年に参戦する日本メーカーは6台のみ

 この数年、MotoGPクラスのエアロダイナミクス戦争は激しさを増している。今年のトレンドはドゥカティがシートカウルにつけた海老の尻尾のような羽根だが、その先駆けはアプリリアがシートカウルにテスト装着したウイングだった。そのアプリリアが今季投入した、コーナーリング時にカウルと路面との隙間を小さくする「太っちょアンダーカウル」は、グリップ向上を狙った空力デバイスだと推測されている。すでにドゥカティとKTMが追随して今後主流になりそうな予感を漂わせており、アプリリアはマシン造りで流行の先端を走ることになった。

 長らくグランプリの最高峰クラスで全盛を誇ってきた日本のメーカーは、今年を最後にスズキが撤退。来季はヤマハが1チーム、ホンダが2チームの計6台と縮小する。こんな時代が来るとは予想もできなかった。

 どんなスポーツでも同じだと思うが、強いチームで優秀な選手は育ち、優秀な選手は強いチームへの移籍を願う。これから先、ドゥカティ、アプリリアにKTMを加えたヨーロッパの3メーカーがますます強くなることは間違いなく、マルク・マルケスやクアルタラロといった素晴らしいライダーのパフォーマンスに頼らざるを得ない日本のメーカーにとって、こうした流れを変えるのは並大抵ではない。

 来シーズンの最有力候補は4チーム8台という最大勢力を誇るドゥカティだが、その最大のライバルは、1チームから2チーム体制へと勢力を拡大するアプリリアになりそうだ。コース上はもちろん、ルール解釈など技術論争でも常に戦うアプリリアの、さらなる躍進が注目される。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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