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エビの尻尾かステゴサウルスか!? Wタイトル王手のドゥカティの速さの秘訣は失敗を恐れぬ貪欲な空力開発にあり
posted2022/10/21 11:01
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
シーズンは残り2戦。タイトル争いは山場を迎えている。
MotoGPクラスは、すでに第15戦アラゴンGPでドゥカティが3年連続4回目のコンストラクターズタイトルを獲得。先週行われた第18戦オーストラリアGPでは、今季6勝を挙げているドゥカティのフランチェスコ・バニャイアが3位になり、2連覇を目指すヤマハのファビオ・クアルタラロに14点差をつけてタイトル王手を掛けた。
今年はドゥカティが4チーム8台と勢力を拡大した。昨シーズン後半からドゥカティの独壇場となっていたMotoGPクラスだが、今年はさらにパワーアップ。2連覇を狙うクアルタラロはドゥカティ勢を相手に孤軍奮闘という形で苦戦している。
ドゥカティは速い。加速が速くて最高速でもライバルに差をつける。それでいてブレーキングがハードとなれば、前にいるドゥカティはなかなか抜けない。ドゥカティの「とにかく速いバイク作り」がライバルを圧倒する形になっている。
空力パーツ開発の先駆者
しかし、現在のMotoGPは厳しいレギュレーション下で戦われている。排気量は1000ccでボアは81mm。エンジンのパフォーマンスに大きく影響を与えるエンジン・コントロール・ユニット(ECU)もハード、ソフトともに共通化されているし、タイヤもミシュランの1社供給となっている。そのため、いまのMotoGPクラスのフリー走行では1秒の間で20台前後が争うという大接戦になることも珍しくない。オーストラリアGP決勝では、優勝したアレックス・リンスから7位までが0.884秒という大接近戦だった。
オーストラリアGPの開催されたフィリップアイランドはアクセルの全開率が高く、スリップストリームが効きやすい大集団の戦いになる。つまりはマシンの性能差が出にくいレイアウトだ。現在のサーキットは、アクセル全開とフルブレーキを繰り返すストップ&ゴーのレイアウトが主流で、エンジンパワーをいかに加速につなげるかの戦いになっている。その中でもっとも重要な役割を果たしているのがエアロパーツで、その開発競争に火をつけたのはドゥカティだ。そしていまも、MotoGPクラスの空力競争をリードしている。