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W杯落選後、原口元気は優しい笑顔で語っていた…「彼らの失敗を願うようなことはしたくない」「リスペクトできる仲間」日本代表へのエール
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/11/26 11:01
W杯メンバーに落選こそしたが、原口元気は戦友たちにエールを送っていた
原口は、チームのために全力で戦える選手だ。クラブでも、代表でも、どんなときでも、どんな起用法でも、たとえ数分の出場でも、その状況下で自分にできるすべてをピッチで表現できる選手だ。
原口は「バランス」という言葉を、よく口にする。自分を出すところとチームプレーを優先するところ。攻撃的に行くところと守備的に行くところ。リスクにチャレンジすべきところとケアしながらプレーすべきところ。そのあたりの感覚が、鋭い。
原口ほど走れる選手は、そうはいない
2部ハノーファー時代、原口は一選手としてだけでなく、チームを導く中心選手として重要な役割を担っていた。自身がどんなプレーをすべきかではなく、どうすればチームが勝てるか。そのために何をすべきかを、探り続けていた。
「自分の数字にもこだわりたいけど、監督に信頼してもらって、使ってもらっているなか、やっぱり自分が出ている試合でチームとして勝ち点3を取らないとって感じがあり、よりそっちにフォーカスしています」
以前、そんなコメントを聞いたことがある。自分が得点を取れなかったことより、成長著しい若手の活躍を喜び、「もっと成長させてやりたい」と目を細めていた。
チームを優先するそうした姿勢があるからこそ、ウニオンでも移籍直後から信頼を得て試合に出ることができた。監督の要求を的確に実践し、そのなかで自分自身の特徴を出すことができる選手なのだ。
「原口ほど走れる選手は、そうはいない」
ウニオンを率いるウルス・フィッシャー監督が、満足そうに答えてくれたことがある。昨シーズンは2得点6アシストと、ゴールにつながるプレーでも貢献した。
原口は調子を落としているわけではない。監督がMFに求める要素が変わったのだ。長身FWジョルダン・シエバチュと快足FWシェラルド・ベッカーを生かすために、まずは前線にロビングパスを当て、セカンドボールを拾い、二次攻撃を繰り出すスタイルとなっている。そうした戦術に、うまく適応できる選手が出場機会を得ているのが実情だ。
「去年はプレンメル(現・ホッフェンハイム)が点を取ったり、僕がアシストしたりなど、8番(インサイドハーフ)の選手が結果を出していたと思うんですけど、今年はなかなか、僕以外の8番も結果を出せていない。去年と比べて、より縦に速くというか、シエバチュとベッカーでいっちゃう感じがあるんでね。そこにもうちょっと自分を合わせていかなきゃいけないって思いは、正直、感じています」
この先、自分の居場所を作っていくためには
チームが選択するスタイルに自分をアジャストさせ、そのなかで自分の長所を少しずつ出していかなければならない。原口は考え、悩み、チャレンジを繰り返し、少しずつ出場機会を増やしてきた。