マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフトウラ話…西武育成4位「高校でもレギュラー捕手ではなかった」なぜ指名された? ある関係者の“怒り”の話「あの記事は誤認です」
posted2022/11/16 17:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
JIJI PRESS
その報道関係の方は、本当に憤慨していた。
いつもは、至って穏やかで、冷静な方なだけに、心底怒っているのが、よくわかった。
「あの文章は、彼にとって事実誤認ですよ!」
あるニュースサイトが、「アマ時代に実績のない選手が、どうしてドラフト指名される?」といったようなテーマで、一編のコラムを掲載した。
その中で、ほとんどリーグ戦経験のない大学生投手がドラフト指名され、入団したチームから1年で戦力外通告を受けた事実を挙げて、その程度の実力しかない投手をどうして(支配下で)獲ったのか?を、否定的に綴った内容だった。
その地方を代表するような強豪大学だったこともあり、その報道関係者もよく取材に足を運んでいて、選手たちの実力や性格、いろいろな事情までよくわかっているだけに、選手たちへの“愛着”もひとしおだ。
それだけに、1年で戦力外になるような投手をなぜ……というくだりに、強い憤りを禁じ得なかったという。
関係者「強豪社会人チームからの誘いもあった」
その投手のことは、私も大学のグラウンドで練習を見て、実力はよく知っていた。
確かに、そのコラムが指摘しているように、リーグ戦の登板は4年間で1度か2度だったが、大学チームが頻繁に行う「オープン戦」では繰り返し投げていたのは知っていた。彼が本格的に「投」と向き合ったのは、大学に入ってからだ。だから、マウンドに慣れるため、実戦経験を積み重ねるため、投げるスタミナを培うために、オープン戦の登板は「育成プログラム」の大切な一環だったのだ。
彼は高校時代、二塁手が本業だった。父親が大学時代に野球部でプレーしており、当時のチームメイトが、ある球団のスカウトとして働いていた。
そんな縁で、練習試合の彼を見に行ったそのスカウト氏が、試合前のシートノックの併殺プレーで、二塁ベース上から繰り出す強烈な一塁送球に、
「凄いスローイング能力だ……投手にしたら、プロを目指せる!」
と、母校に推薦して進学。4年間、懸命な努力を重ねた結果のプロ入りだった。
つまり、投手経験わずか4年の新米投手……言い換えれば、大学4年間では、時間の足りないタイプの投手なのだ。