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ドラフトウラ話…西武育成4位「高校でもレギュラー捕手ではなかった」なぜ指名された? ある関係者の“怒り”の話「あの記事は誤認です」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2022/11/16 17:00
10月20日に行われたドラフト会議。異例の9球団“1位事前公表”となった
勝って当たり前みたいな強豪だから、経験不足の投手をマウンドに上げるのは難しい。その代わり、大学を卒業して3、4年したら、リーグ戦で投げていた同期を凌駕しかねない「潜在能力」の持ち主。そういう存在が、強豪チームにはよくいるものだ。
事実、練習のブルペンで見た時のその投手は、キラキラッと光る存在だった。
長い手足を強い弾力でしならせながら右腕を振り下ろして投げ込んでくる快速球。同期で、同じ年にドラフト1位指名されることになる同僚投手の速球と互角か、それ以上の「うなり」を帯びて、構えたミットに叩きつけられていた。
現場で、この目で見ていた私が言うのだから、間違いない。それ以上に、是非ウチへ!と手を挙げていた強豪社会人チームがいくつもあったことも、私はその大学チームの関係者から聞いている。
戦力外通告の理由になったのは、右ヒジのトミー・ジョン手術。ヒジのしなりで投げる彼のようなタイプの投手は、どうしてもそのヒジに負担が来る。「職業病」のようなもので、最近ではよくある話だ。
支配下選手としては戦力外通告になったのち、「育成選手」として再契約して、あらためて再起を期すことになっている。
西武育成4位「高校でもレギュラー捕手ではなかった」
リーグ戦でほとんど実績がないのに、ドラフト指名された大学生選手。今年のドラフトでも、何人かそうした選手がいる。
オリックス育成3位・入山海斗投手(東北福祉大・178cm78kg・右投右打・日高高中津分校)。
やはり、リーグ戦登板は1、2試合と聞いているが、ブルペンで投げ込んでくる140キロ後半の速球の「うなり」はえげつない。バッターボックスで球筋を見ていると、蚊が飛んでくるようなブーンという音もろとも、かん高い捕球音でミットにおさまる一級品の球威だ。
変化球“勉強中”のために、実戦登板の機会こそ少なかった。しかし、そこを「伸びしろ」と解釈する球団には魅力的な存在となって、育成指名につながった。
今回のドラフトでもっと驚いたのは、西武育成4位・是沢涼輔捕手(法政大・178cm79kg・右投右打・健大高崎高)のほうだ。
この秋のリーグ戦、法政大のベンチには、3人の4年生捕手が入る試合が、何度もあった。試合前のシートノック、その中でいちばんの強肩に見えたのが、この是沢涼輔捕手だった。
しかし、それ以外のリーグ戦実績はほとんどない。リーグ戦では、ブルペンで試合に背を向けてしゃがむ時間がほとんど。しかし、その時にレギュラーマスクをかぶって、実戦で奮闘していた村上喬一朗捕手(168cm82kg・右投右打・東福岡高)がオリックスに育成5位指名されたのが、ブルペンの是沢捕手より8人も後なのだから、「ドラフト」だけはわからない。