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「あまりに清原を意識し過ぎて」巨人・槙原寛己が振り返る痛恨の日本シリーズ初戦…西武時代の4番・清原とヤクルト村上の不思議な共通点
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2022/10/22 11:25
1990年日本シリーズ「巨人vs西武」第1戦で3ランを放った西武デストラーデ(右)と清原和博。打たれた巨人・槙原寛己が当時の痛恨を振り返った
これは清原の「4番打者」としての存在感の大きさを物語るエピソードだった。そういう4番と対戦する投手の心理。それはまさに慎重になり過ぎる、攻めようと思っても、大胆には攻められない。それが「本物の4番」の存在感というものなのだろう。
清原と村上の打者としての「不思議な共通点」
今年の日本シリーズでは、この清原と同じ存在となるのが、ヤクルト・村上宗隆内野手である。
令和初の3冠王であり、巨人・王貞治(現ソフトバンク会長)のシーズン55本塁打を抜き、歴代2位の56本塁打を記録したスラッガー。記録的には清原を凌駕するのが今年の村上であり、その村上をどう封じるかは、対戦するオリックス投手陣の今シリーズ最大のテーマとなるはずだ。
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確かに清原と村上は打者としても似ている。右と左の違いはあるが、清原も村上も、同じように広角にグラウンドのフェアゾーンを90度使って本塁打が打てる。それだけ穴がない打者で、弱点の少ない打者でもある。阪神とのクライマックスシリーズ、ファイナルステージでも第2戦で逆転2ランを放ち、第3戦では、2死満塁から“走者一掃”の投手内野安打でステージ突破を決めてもいる。そういう“星”を持つことも2人の不思議な共通点だった。
日本シリーズでは投手陣が村上を封じることができれば、オリックスが圧倒的に優位に立つことになるが、その一方で村上はそう簡単に封じることのできない打者だということも言える。
「”1点を惜しまないこと”を徹底すべきだった」
そこで90年の日本シリーズである。
西武にスイープされた藤田監督が、戦いを振り返って語っていた言葉がある。
「1点を惜しまないこと。その意識を投手陣にもっと徹底すべきだった。あの初回も清原に犠牲フライや(シングル)ヒットを打たれるのは仕方ないと思えなかった。先制点をやりたくない。そこに縛られて、大胆な勝負ができなかった。マキ(槙原)だってもっといいところが出せたはずなんだ。マキは逃げたわけじゃない。ただ清原を意識するあまりに、自分の持ち味を出せないままにデストラーデに一発を浴びて終わってしまった。自分たちの持ち味を、まったく出せなかったことが敗因だった」
このときの槙原さんだけではなく巨人の投手陣は、相手の弱点から逆算した配球を描いていた。そうではなく自分たちの得意な球、プラス材料を積み重ねた組み立てをして、どう設計図を描けるか。
実はそこに勝機があったはずなのだ。