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金農サヨナラスクイズから4年…元“近江の左エース”林優樹が「プロ野球選手になりたい」と誓った瞬間〈転機は朗希、奥川と出場したW杯〉
posted2022/10/22 17:02
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
Fumi Sawai
小雪がちらつく滋賀県彦根市の近江高のグラウンドで、多賀章仁監督がある選手を紹介してくれた。
「あの子が林です。まだ1年生なんですけれど、いいボールを投げるんですよ」
そう紹介されたことに少し照れくさそうな笑みを浮かべた当時16歳の林優樹の表情にはまだあどけなさが残っていた。身を包む真っ白な練習着がやや大きく見えるほど華奢だった左腕は、その後の近江高校の歴史を塗り替えていくことになる。
記憶に残るのは2年夏の甲子園。3回戦で強打の常葉大菊川を相手に5回まで完璧に抑え、8回11奪三振の好投を見せた。準々決勝では吉田輝星(現・日本ハム)を擁する金足農相手に5回から登板したが、1点リードで迎えた9回裏に2ランスクイズでサヨナラ負けを喫した。劇的な結末にマウンドで呆然と立ち尽くす林の姿は、大会を象徴する一幕として大会後に何度も映像が流れた。
朗希、奥川、宮城らと出場したU-18W杯
3年夏の甲子園が終わると、佐々木朗希(大船渡→ロッテ)、奥川恭伸(星稜→ヤクルト)宮城大弥(興南→オリックス)といった錚々たる顔ぶれと共にU-18日本代表に選出された。スター候補たちとWBSC U-18ベースボールワールドカップでの活躍が期待されたが、林は開催地・韓国で挫折を味わう。
1次ラウンドのアメリカ戦で先発マウンドを託されたが、先頭打者に左翼前に落ちる二塁打を許すと、そこからリズムを崩し、3四球を与えて2回で降板した。スーパーラウンドの韓国戦では5番手投手として登板するも、打球処理を誤って逆転負けのきっかけを作ってしまい、チームは5位に終わった。
「自分なんて、こんな舞台で通用するわけがない」
道具の入ったカゴを一緒に持ち運びしていた佐々木とは今でも連絡を取り合う仲だが、11人の選手がプロ入りした“超高校級”のメンバーに最後まで圧倒され続けた。