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松尾汐恩DeNAドラ1も、なぜ大阪桐蔭2人が“指名漏れ”? スカウトの指摘した課題「川原嗣貴はクイック、海老根優大は…」
text by
間淳Jun Aida
photograph byJun Aida
posted2022/10/21 11:03
DeNAのドラフト1位・松尾汐恩。ただし今回のドラフトで指名された大阪桐蔭勢は彼1人となった
50メートル6秒2のスピードと肩の強さ、打席では長打力と勝負強さを兼ね備える松尾。スローイングの精度も上がってきたと自信を見せる。プロで定位置を掴むための課題には、経験不足とキャッチングの技術を挙げた。
「捕手は経験が必要なポジションです。まだキャッチングミスが多いので、改善していかなければいけないと思っています」
指名しなかった球団スカウト「2位の可能性はあった」
松尾を1位指名しなかった球団のスカウトも、その能力を高く評価している。「2位で指名する可能性はあった」と明かし、「今年のドラフトは不作という声もありますが、松尾選手は例年のドラフトでも1位指名される力を持った選手」と話す。
そのスカウトが、松尾の最大の魅力と指摘するのは打力。速くて強いスイングと打球を遠くに飛ばす技術を絶賛する。ただ、高校生ではトップレベルでも、高卒1年目から対応できるほどプロの投手は甘くない。現状の課題を、こう指摘する。
「松尾選手はバットのヘッドが投手の方に向く構え方をしていますが、力が入ったり、投球を良く見ようとしたりすると、バットの傾きが大きくなる時があります。高校生の投手には対応できますが、プロの投手の直球には振り遅れてしまいます。トリプルスリーを目指して本塁打を求めるのであれば、ある程度のバットの重さは必要なので、スイングの力も今のままでは足りません」
捕手としては肩の強さを評価している。松尾が長所としているスピードもフットワークに生きてくると考えている。同スカウトは松尾が一軍の試合に出るための条件には、迷わず「キャッチング」と答えた。
「ワンバウンドの捕球もそうですが、ミットの芯で捕る、投球の勢いに押されずミットを止めるといった基本的な技術を向上させる必要があります。捕手の経験が浅いので練習すれば上手くなると思いますが、捕手には最低限の守備力がなければ一軍に定着できません」
スカウトが課題を指摘するのは能力の高さを認める裏返し。可能性を秘めた選手と考えているだけに、成長を楽しみにしながら警戒している。
川原と海老根は会見に姿を現さなかった
ドラフト会議では毎年、喜びの裏に落胆がある。
大阪桐蔭には松尾の他に2人、プロ志望届を提出した選手がいた。3年生でエースナンバーを背負った川原嗣貴投手と、走攻守3拍子揃った海老根優大外野手。最後まで名前が呼ばれず、会場に姿を現すことはなかった。
松尾が指名され、取材を受けていた際、会場の取材を仕切るマスコミの幹事社は「他の選手が指名された時は、松尾選手の取材を一時中断します」と各社に伝えた。うなずく記者たちは、その時が来ると思っていた。