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西武ドラフト5位「これが今の自分の評価」近江・山田陽翔の知られざる苦悩とは? 先輩・同級生が語る強気なエースと過ごした3年間
posted2022/10/21 17:02
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
KYODO
ドラフト会議が始まって1時間35分を過ぎた頃、ようやく「山田陽翔」の名前が会見場に響く。だが、本人の表情はまったく変わらない。
「これが今の自分の評価だと受け止めています」
甲子園で歴代5位タイの11勝を挙げた「甲子園の申し子」。今年の甲子園を彩った右腕は、念願の上位指名が叶わなかった。それでも、これが現実だと、表情は崩さなかった。
ここからが本当の闘い。そう腹を括っているようにも見て取れた。
山田陽翔と競い合った先輩エース
奮闘する背番号1の姿が聖地で映える。打って投げて、まるでスポットライトが当たっているかのような躍動ぶり。昨夏、自分が背負った「1」が、これほど大きく見えるとは思っていなかった。
「あれぐらいはやれると思いました。センバツを見ていて、去年よりは真っすぐがすごく良くなったと思いました。そのセンバツから、夏は真っすぐがさらに良くなっていたと思います」
体作りのため、トレーニングをしながらテレビ越しに見た母校の試合。2021年夏の甲子園で近江の4強進出の立役者となった岩佐直哉(龍谷大1年)は、聖地で躍動する後輩たちを誇らしげに見つめていた。
その中心に立っていた山田陽翔は、岩佐にとって二人三脚で歩んできた“相棒”のような存在でもあった。
昨夏は山田が先発し、岩佐がリリーフするという必勝リレーを確立させ、頂点まであと1歩のところまで登りつめた。2回戦の大阪桐蔭戦では、岩佐が投じたストレートは149キロを計測。山田に負けない存在感を聖地で見せつけていた。
「今年はお客さんが入っているので羨ましいです。でも、自分もお客さんが入っている前で投げたら150キロは出せたかもしれません」
そう言っていたずらっぽく笑った。