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エビの尻尾かステゴサウルスか!? Wタイトル王手のドゥカティの速さの秘訣は失敗を恐れぬ貪欲な空力開発にあり 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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photograph bySatoshi Endo

posted2022/10/21 11:01

エビの尻尾かステゴサウルスか!? Wタイトル王手のドゥカティの速さの秘訣は失敗を恐れぬ貪欲な空力開発にあり<Number Web> photograph by Satoshi Endo

ファンの間で、「エビの尻尾」とも「ステゴサウルス」とも言われるドカティのシートカウルの空力パーツ

 思いついたアイデアを次々に形にしてテストに投入する。それが良ければ実戦に投入される。とにかく、勝利に向けて貪欲であり、失敗を恐れない。シーズン序盤、マシンテストが続いたバニャイアは、「レースウイークを通して同じ状態で走ったことがない」と不満たらたらだったが、「4月以降は基本的に何も変わっていない。すごく安定しているしいい状態」と語り、リザルトを上げることに成功。ついには、念願のタイトル獲得に王手をかけることになった。

 コロナ禍の中で始まった2020年シーズンは、絶対王者のマルク・マルケスが右腕上腕を骨折して戦列を離れ、スズキのジョアン・ミルがチャンピオンになった。21年はクアルタラロが王者に。今年はバニャイアとクアルタラロの戦いになっているが、コロナ禍とマルケス不在が断続的に続く中で、ドゥカティが着々といいマシンを作り上げ、それが3年連続コンストラクターズタイトル獲得につながった。

ライダーズタイトルの行方

 07年にケーシー・ストーナーがドゥカティでコンストラクターズとライダーズタイトルを獲得したときは、ストーナーの天才的な速さとブリヂストンタイヤのパフォーマンスがミシュラン勢を圧倒した。しかし、いまやタイヤは1社供給になり、エンジンだけでは、そう簡単にアドバンテージを築くことが出来ない厳しいルールになっている。ドゥカティだけが採用するバルブスプリングに頼らない強制弁開閉機構や、ドゥカティ独特のバランサーウエイトは常に話題になるが、ドゥカティの速さの秘密は、そうした細かな積み重ねとライバルを一歩リードする空力にあるように思う。

 バニャイアがタイトル王手で迎えるマレーシアGP。クアルタラロに11点差以上をつけてゴールすればバニャイアのタイトルが決まる。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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