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エビの尻尾かステゴサウルスか!? Wタイトル王手のドゥカティの速さの秘訣は失敗を恐れぬ貪欲な空力開発にあり 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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posted2022/10/21 11:01

エビの尻尾かステゴサウルスか!? Wタイトル王手のドゥカティの速さの秘訣は失敗を恐れぬ貪欲な空力開発にあり<Number Web> photograph by Satoshi Endo

ファンの間で、「エビの尻尾」とも「ステゴサウルス」とも言われるドカティのシートカウルの空力パーツ

 エアロパーツの目的は、MotoGPのあり余るパワーをいかに活用するか、にある。共通ECUが採用されてからは、特に重要なアイテムになった。以前なら電子制御でウイリーなど、様々な領域をコントロールすることもできたが、共通ECUになってからはやれることが限られる。ドゥカティが先鞭をつけたエアロパーツは加速時のウイリーを抑制し、その分、パワーを使えるようにするというもの。加速時にリアが沈むデバイスもドゥカティが最初に導入し、エアロパーツとは異なる考え方でウイリーを抑制し、よりパワーを出すことを可能とした。

 エンジン内部の構造と違い、エアロパーツや外部的な違いはすぐに真似が出来る。リアのデバイスもしかりで、ドゥカティのやることはあっという間にMotoGPクラスに伝播していく。ドゥカティが今シーズン中盤にシートカウルに取り付けたエビの尻尾のようなパーツは、いまのところ他メーカーは追随してはいないが、先日のオーストラリアGPでは、ホンダのマルク・マルケスがテストしていた。

 こうしたエアロパーツの効果はどういうものなのか? という質問に対し、ライダーたちは異口同音に「効果は大きい」と語る。もはや、ウイリー抑制のエアロパーツなしは考えられないのだそうだ。

失敗を恐れない開発姿勢

 その昔は単純にエンジンパワーの戦いだった。それがタイヤの進化に合わせてエンジン+車体の戦いとなり、4ストロークエンジンを搭載するMotoGPマシンになってからはECUの戦いとなった。これには異常なほどコストがかかったそうで、それを抑制するために共通ECUが採用された。現在は、電子制御の介入が制限されているため、エアロパーツやさまざまなデバイスで補うという戦いになっている。

 現在、MotoGPクラスはシーズン中のエンジン開発は禁止され、年間のエンジン使用数は、開催数が増えるにつれて7基から8基になった。以前は、エンジンの分解検査は他チームから抗議がなければ実施されていなかったが、今年は各メーカーとも定期的に分解検査を受け、シーズン開幕前に届け出た状態に違反していないかどうかをチェックされている。とにかく厳しい規則と監視の中で戦われているだけに、ドゥカティの速さは目を見張るものがある。

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