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メッシがいないバロンドール「建前は排除して本音だけで選ぶ」67年目の最高選手投票が今年、大変革を断行する理由とは?
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2022/10/15 17:02
昨年は2年連続7度目の受賞を果たしたメッシ。その彼が今年は候補にすら入っていない
――しかしコレクティブなパフォーマンスの重視は、バロンドールを他の個人表彰と差別化するものではありませんでしたか?
PF その通りで、その基準がなくなったわけではない。2番目に格下げされただけで、バロンドールが個人表彰であることを強調するための変更だ。コレクティブなパフォーマンスもタイトルの獲得も、重要性が少し下がっただけで基準としては存在し続ける。
バロンドールが与えられるのは、あらゆる勝利を収めたチームの選手に対してではないということであり、それはすでに考慮されていたことでもあった。ルカ・モドリッチは2018年の受賞者だが、W杯は決勝に進んだだけで優勝したわけではない。昨年のメッシも、バルセロナでCLを制したわけではなかった。つまりビッグタイトルを獲得したからといって、それが即座にバロンドールへとつながるのではない。他の要素も重要になる。
――他には投票委員の数も制限されました。
PF その点でも少し厳しくした。ここ4~5年はおよそ180人が男子バロンドールに投票していたが、それを100人に制限した。FIFAランキングで100位以内に入っている国・地域の投票委員だけに限ることにした。というのもバロンドールは専門性の高い投票であり、幾つかの国では正確性の高いビジョンを抱くことが難しい。だから100人に制限したが、100人でも大変な数だ。
バロンドールの変革の歴史
――この改革はバロンドールのルネッサンスといえるのでしょうか?
PF そうかも知れない。何百年もの長い歴史があるわけではないが、ときに制度の見直しと変革は必要だ。必要なものを加えて変更し、新たに再生させる。今回の改革の目的もそこにあったが、こうした大きな変更は毎年のようにおこなうものではない。次の変更は15年・20年先になるだろう。
――1956年の創設以来の大変革ではありませんか?
PF 他にも大きな変更はあった。とりわけ1995年がそうで、ヨーロッパのクラブに所属すればヨーロッパ以外の国籍を持つ選手でも選考の対象にした。そして2007年には、世界のすべての選手に選考対象を広げた。さらに2018年には女子バロンドールも創設した。だから今回は、バロンドールの歴史のなかで4度目の大きな変革・進化といえるかも知れない。だが66年の歴史で4度というのはまあ悪くない。真の継続性を維持しているということだ。
――バロンドールの価値は変わることがないと考えますか?
PF 決して思い上がってはいけないが、選手にとってバロンドールの重要性はこれからも変わらないだろう。
<#2に続く>