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プロ野球PRESSBACK NUMBER
“億超え投資”の最新野球データ分析… 甲子園優勝校・アマ強豪だけでなく「小、中学生や保護者も興味を」持つようになった“2つの利点”
text by
間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama/Jun Aida
posted2022/11/01 11:01
仙台育英の甲子園優勝など、日本の野球界でもデータ活用が浸透している
データ取得によって選手に合った技術の習得や練習法が明確になり、効率的にパフォーマンスを上げられる。森本氏は「データは魔法ではありませんが、現状の能力を理解して正しい目標を設定し、そのゴールに最短距離で到達する助けになります」と説く。
体への負担も数値で表すことが可能なため、怪我の予防にもつながる。動作解析では、どの動きをした時に、体のどの部分に、どのくらいの負荷がかかっているのかが分かる。怪我のリスクを減らす投球フォームを身に付ける大きなヒントとなるのだ。
子どもたちにも有効活用してほしいと願う理由
専門的な分析ではなくても、データは十分に活用できる。森本氏は成長期の子どもたちが数値を記録する大切さを強調し、新設した施設には小、中学生にも訪れてほしいと話す。
「成長期の子どもたちは体格の変化に伴って、体の痛みや違和感が出てきます。身長や筋力が変われば、同じようにしている動きにも違いが生まれます。データを記録しておけば、パフォーマンスの変化に気付き、大きな怪我をする前にいち早くアラートを鳴らすことができるかもしれません」
まだ成長過程の体に負荷をかけすぎれば、将来を奪う怪我につながりかねない。根拠のない感覚的な指導は、子どもたちの成長を妨げる可能性がある。森本氏は言う。
「とりあえず走っておけというような指導は不十分だと思います。その練習にどんな狙いや効果があるかきちんと理解して指導するのが本来の正しい姿。選手の努力が報われるための一助としてもデータへの関心は高まっていると感じています」
データへの関心や需要が高まっているからこそ、森本氏は活用方法をより正しく、より広く知ってもらう使命感と責任感を強くしている。
「私たちアナリストはデータを分析するノウハウを持っていますが、現場で生かすやり方は指導者の方が知っているケースもあります。自分たちも一方通行にならず多くの指導者と連携していけたら、理想的な新しい指導の形をつくれると考えています」
民間企業初となるスポーツ科学を活用した施設は、データ分析をより一般的なものに変える潮流をつくる可能性を秘めている。
第2回では日本とアメリカでのデータ分析の捉え方の違いなどについて聞いた。<#2につづく>
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