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プロ野球PRESSBACK NUMBER
“億超え投資”の最新野球データ分析… 甲子園優勝校・アマ強豪だけでなく「小、中学生や保護者も興味を」持つようになった“2つの利点”
text by
間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama/Jun Aida
posted2022/11/01 11:01
仙台育英の甲子園優勝など、日本の野球界でもデータ活用が浸透している
今夏に仙台育英が甲子園で優勝を果たしたのは、データの必要性を象徴する出来事とも捉えられる。チームを率いる須江航監督は客観的な数値を重視し、データ分析の専門班をつくっている。
投手担当と野手担当に分かれて相手チームの映像をチェックして配球の傾向や打者の特徴をまとめ、チーム全体で共有する役割を任せている。須江監督は情報科の教師ということもあり、普段の練習から集めたデータを全選手と指導者が共有するスプレッドシートに落とし込む。
例えば、投手の投球数や疲労度などを入力し、その数字をもとに週末の試合に投げさせるかを判断している。2018年に仙台育英の監督に就くまで指揮した系列の中学軟式野球部でもデータを活用して日本一に輝いている。
データ分析で挙げられる「2つの利点」とは
森本氏はデータの活用が進んできた理由には、機器の進化に加えて、意識の変化があると考えている。これまで感覚で続けられていた指導や練習法は本当に正しいのか。データで客観的に正しい判断をしようとする動きが加速している。
森本氏がデータ分析の利点に挙げるのは、主に「パフォーマンスアップ」と「怪我の予防」の2つにある。
データ分析の技術が進み、これまでは野球の常識とされてきた技術や指導の答え合わせができるようになった。
例えば、「投手は低めに投げると長打を打たれにくい」、「速い打球はヒットになりやすい」という考え方は、その指導を支持するような結果となった。一方、空振りを奪いやすい高めの投球の利点や速い打球を飛ばすために空振りを恐れずにスイングすることなど、従来の考え方やプレースタイルに変化が生まれている。
「球質」1つをとっても、理想の軌道を導き出せる
さらに、取得するデータの種類によって今までにはなかった概念も生まれている。「球質」は、その1つだ。
同じ直球でも、投手によって回転数や回転軸に違いがある。シュート成分が高い、伸びが多い、いわゆる真っスラの軌道など、球の特徴を数値化できる。これにより、直球の球質を生かす変化球の組み合わせ、さらには理想的な変化の軌道や変化の大きさまで導き出せるようになった。
モーションキャプチャやハイスピードカメラを活用した科学的なデータを使えば、理想の変化球を投げるために、個々の投球フォームに合った体の使い方やボールの握り方、リリースの仕方なども解析できる。