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Jをめぐる冒険BACK NUMBER
シュミット・ダニエルはなぜ日本代表で好プレーを披露できたのか…PKストップだけではない充実の要因「熊本時代と重なる感覚があって」
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2022/10/29 11:00
日本代表9月シリーズで存在感を放ったシュミット・ダニエル。W杯に向けての意気込みや欧州で戦って得たGKの知見を話してくれた
――欧州遠征前にスタメンで出場した直近のゲームは、6月のキリンカップ決勝のチュニジア戦。0-3で敗れましたが、それを踏まえて今回、心がけたことは?
「チュニジア戦では、後半にちょっと集中が切れるタイミングが多かった気がしたんですよね、自分の中で。だから、そういう時間帯を一切作らないように、とにかく声を出し続けることは意識していました。あとは、チュニジア戦の2失点目のようにルーズボールが来たときの反応や出足が遅れないように、姿勢はすごく意識していました」
――2失点目というと、センターバックの吉田麻也選手とお見合いする状態になってしまった失点ですね。吉田選手とは、今遠征でしっかりとコミュニケーションを取ったんですか?
「普通にしゃべりましたけど、プレーについて『もっとこうしてほしい』ということは伝えてないですね。僕は、注文をつけるというより守備陣に合わせたいタイプなので。それができるのも、自分の特徴かなと」
ロアッソにいた時と重なる感覚があって
――W杯のメンバー発表前最後のテストマッチで、相手は曲者のエクアドル。かなり難しいゲームでしたが、この重要な一戦で好パフォーマンスを出せた要因は?
「今シーズンに入ってからの自チーム(シント=トロイデン)での積み重ねの成果だと思いますね。今シーズンはGKコーチが代わって、新しいGKも入ってきたんです。GKコーチはすごくいいコーチだし、新しく入ってきたGKもすごくレベルが高い。彼らと今、充実したトレーニングができていて、そのタイミングで代表戦があってチャンスがめぐってきた。積み重ねてきたものをうまく出せたかな、と」
――そのGKコーチは、どんなところがいいんですか?
「デニス・ルデルというドイツ人の方で、ここに来る前はシュツットガルトU-17で指導されていて。一つひとつの技術に対する指導がわりと細かくて、アグレッシブにボールにアタックするスタイルを好むんです。僕も2015年にロアッソ熊本にいたとき、サワさん(澤村公康GKコーチ)のもとで、そういうスタイルを学んだ。当時と重なる感覚があって、すごくしっくり来ています」
「線路の上にいるやつは全員吹っ飛ばしていけ」
――アグレッシブにボールにアタックするスタイルを、もう少し具体的に言うと?
「主に1対1の場面で、相手との距離をどれだけ早く詰めるか、相手にどうやって突っ込んでいくか。デニスがよく使う表現としては、『列車のように、線路の上にいるやつは全員吹っ飛ばしていけ』と。それくらいの勢いやパワーでボールに突っ込んでいくことが求められる。あと、僕がずっと身に付けたいと思っていた技術で、ブロッキングというのがあって。手足を広げて滑りながら距離を詰めてシュートをブロックするんですけど、デニスのおかげで今年、それが形になってきた。新しい技術を習得しつつあるという充実感を得られています」