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Jをめぐる冒険BACK NUMBER
シュミット・ダニエルはなぜ日本代表で好プレーを披露できたのか…PKストップだけではない充実の要因「熊本時代と重なる感覚があって」
posted2022/10/29 11:00
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Atsushi Iio
かつて、日本代表のMF原口元気が、こんなことを話していた。
「サッカーなんて1、2試合で評価が変わるもんだから。あの試合、あのゴールで自分の置かれている立場がガラッと変わる。振り返ってみて重要だったなっていう試合を、僕は何度も経験してきた」
だとすれば、日本代表のGKシュミット・ダニエルにとって9月27日のエクアドル戦は、のちに振り返ったときに大きな意味を持つゲームとなるかもしれない。
正GKの権田修一の負傷によって4日前のアメリカ戦の後半からピッチに立ったシュミットは、エクアドル戦のスタメンに指名され、たび重なるコーナーキックのピンチを何度も防ぐ。そして83分に訪れたペナルティキックの窮地も、渾身のセーブで切り抜けた。
もちろん、権田が積み重ねてきた実績と信頼が揺らぐことはない。だが、無風かと思われていたGKのポジション争いに一陣の風が吹いたのは間違いない。
そして、改めて大きな可能性を感じた人も多かったことだろう。身長197cmと世界規格を誇るシュミットに、世界と伍していく可能性を――。
エクアドル戦を「80点」と評した意図を聞くと
――エクアドル戦のあと、今日のプレーは何点かと聞かれて、「80点」と答えたじゃないですか。「今まで日本代表でプレーしてきたなかで、間違いなく一番いいパフォーマンスだった」と。どのあたりが納得のいくプレーでした?
「まず、終始慌てずにプレーできたこと。難しいパスを繋いだ場面はないですけど、別に僕は、それをしたいわけでもないので。ただ危なげなくやりたいと思っていて、それができたゲームでした。シュートストップが求められる場面でも期待に応えられたかなと。それで、そういう評価をしました。足りなかった部分としては、コーナーキックの場面で1本こぼしてしまった。結果、セカンドボールに反応して防ぎましたけど、危ない場面は作りたくなかった。コーナーキックでは相手が最後まで競ってきたので、対応が難しかったんですよね。
(普段プレーしている)ベルギーでは意外とそういうの、ないんですよ。自分が出られるエリアにボールが入ってきたらしっかりキャッチするか、パンチングでがっつりとボールを弾き出したかった。そこは納得していない部分です」
PKは苦手なイメージがあって。だから…
――83分に迎えた最大のピンチ、横っ飛びでPKを防いだ場面は見事でした。でも、ことさらPKだけに注目してほしくない?
「いや、そんなことはないです(笑)。今まで試合中にPKを止めたことがなかったんですよ(苦笑)。PKは苦手なイメージがあって。だから、ドンピシャで止めるのって、こんなに気持ちいいもんなんだと。自然とガッツポーズが出ちゃいましたね。ひとつの成功体験になったという意味でも、気持ちのいい試合でした」