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ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
「ファイトマネー倍額は最低ライン」「日本王者の年収を1000万円に」あの亀田興毅が本気で“ボクシング界の底上げ”に取り組む理由
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byMiki Fukano
posted2022/10/10 11:00
出場ボクサーの“ファイトマネー倍額”を掲げて注目を集めるイベント『3150FIGHT』。ファウンダー(創設者)の元世界王者・亀田興毅氏に話を聞いた
目指すは「ボクシングのプラットフォーム」
――少し説明します。日本はジム制度といって、すべてのボクサーは日本プロボクシング協会所属のボクシングジムと契約をしなければなりません。近年、東京を中心に興行を開催している『DANGAN』はジムの垣根を超えたプラットフォームと言えますが、日本では多くの場合、昔からジム(中でも力のある大手のジム)が興行を主催してきました。
ジムが興行を開催するのは大変なんです。ジムの会長は選手の練習を見て、営業に行って、スポンサーを集めて、チケットも売る。そもそもコロナ禍でジム経営そのものが大変になっているのに、これは無理ですよ。だからジムではない第三者によるプラットフォームが絶対に必要だと思いました。
――確かにジムが興行を打つのは大変です。
大変なだけではなく、ジムが興行の主催者になるリスクもあるんです。僕は最初、「3150ファイトクラブ」というジムの会長という立場で『3150FIGHT』という興行を開催しました。そうすると赤コーナーに「3150ファイトクラブ」の選手がズラリと並ぶ。対する青コーナーは地方の選手とか海外の選手たちです。これね、自分も昔はなんとも思わなかったけど、外から見たら「これでホンマに中立で公正な試合になるのか?」と思われるんじゃないかと。そう思ったんです。
――ジムが興行を打つと、そのジムの所属選手は主催者側の選手という立場になる。それが不公平だと見られてしまう危険性がある。そういうことですか?
そうです。声を大にして言いますけど、実際にそんなことは起こりません。JBCの審判は中立ですから。でも、そういうふうに「思われてしまう」というところが問題なんです。これはあかんと思って、自分はジムの会長を辞めて弟の大毅に代わってもらった。ジムの名前も「3150ファイトクラブ」から「KWORLD3」に変えた。プラットフォームを作るために、まず自分が中立な立場になろうとしました。