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アントニオ猪木が野次に「つまみ出せ、コノヤロー!」若き日の高田延彦と武藤敬司が見た、“プロレスラー猪木が闘い続けたもの”の正体
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byYuki Morishima
posted2022/10/09 11:01
1995年、10・9東京ドームのメインとして行われた武藤敬司vs高田延彦
武藤と高田が見た“アントニオ猪木”「千両役者というのかな」
武藤 そうか。じゃあ、もしUWFがなかったら、ストロングスタイルの王道ラインは猪木さんから藤波(辰爾)さん、そして高田さんが継承していた可能性があったんだな。プロレスに対する思想的にも世代的にも本来、猪木さんの継承者になるのは高田さんでしたよ。でも、抜けてしまったから俺と蝶野(正洋)、橋本(真也)の3人に無理やり“闘魂”三銃士って名前を付けただけ。実際、UWFの人たちがいなくなってから、なんとなく新日本に猪木さんの色が薄くなっていきましたから。
――猪木イズムに強い影響を受けた人がUWFに行った感もありましたもんね。
武藤 俺たちから見たって、猪木さんの思想ってUWF寄りだと思うから。
高田 そうじゃなきゃ異種格闘技戦なんてやってないよね。
武藤 ただ、猪木さんのプロレス自体はアメリカンスタイルで(笑)。
高田 そっちも超一流なんだよね。あの人の受けの凄みなんて誰も真似できない。言い方はあれだけど、千両役者というのかな。
武藤 顔の表情や首すじだけでお客さんの目を惹きつけたりするもんなあ。
「猪木さんもずっと世間の目と戦っていた」
――だから高田さんと武藤さんの要素を合わせると猪木さんになるというか。高田さんが格闘技志向を受け継ぎ、武藤さんがプロレスの天才性や千両役者ぶりを継承したんじゃないかなって気がします。
武藤 それはわからねえけど、だからこそ10.9の俺と高田さんの試合が、いまでも語られるのかもしれないな。高田さんは今のプロレスも観てます?
高田 正直、選手の名前もオカダ、棚橋、飯伏とか5〜6人しか出てこないね。でも、いい選手が多いんでしょ?