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《3年ぶり日本GP開催》Moto2注目の日本人ライダー・小椋藍が、得意のもてぎで勝利を狙える理由とチャンピオン争いの行方
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2022/09/23 06:00
アラゴンGPでは苦戦して表彰台を逃すも4位入賞した小椋。首位フェルナンデスを射程圏内に捉え、得意とするコースレイアウトの日本GPで首位奪取を狙う
得意なコーナーやサーキットは自分でなんとかする。しかし、そうでないところは、バイクのセッティングでなんとかしてもらいたい。ライバルのフェルナンデスが所属するRed Bull KTM Ajoは、これまで多くのチャンピオンを輩出してきたことでそうしたアイデアとデータを持っているが、小椋が所属する出光・ホンダ・チーム・アジアにはない。なぜなら小椋は、Moto3クラスでもMoto2クラスでも初めてチャンピオン争いをする選手だからである。
今年の夏、小椋はホンダから受けたMotoGPクラスへのスイッチのオファーを断った。
「チャンピオンを獲ったら行きたいが、チャンピオン争いをするいまの状況で決断しろと言われたら断りたい」。つまり、Moto2クラスでチャンピオンを獲りたいのが理由だった。現在、王座獲得の可能性はさらに高まっているが、もしチャンピオンを獲ったとしても、まだまだMoto2クラスで学べることは多いと小椋は語る。着実に前進する努力型ならではの決断だった。
残り5戦のチャンピオンシップ展望
3年ぶりの開催となる日本GPで、小椋はファンから大きな期待を受けるだろう。前戦アラゴンGPはフリー走行、予選と苦戦したが4位でフィニッシュ。だが、フェルナンデスが3位だったこともあり、ポイント差は4から7に広がっただけで済んだ。そのせいか、戦いを終えた小椋は、4位という結果にも明るい表情を見せた。
今週の第16戦日本GP、連戦となる第17戦タイGPは、小椋が得意とするタイプのサーキットで戦われる。続く第18戦オーストラリアGPは両選手ともに未知数の部分が多く「読めない戦い」となり、第19戦マレーシアGPは互角の戦いが予想される。そして最終戦となる第20戦バレンシアGPは小椋が苦手とするサーキットだ。
以上が日本GPを含む終盤5戦の展開予想だが、そうなると日本GPとタイGPの2連戦が小椋にとって逆転チャンピオンへの大きな鍵を握りそうな予感がする。
小椋が大嫌いなチャンピオン争いの予想をしてみたが、この戦いが小椋藍をライダーとして大きく成長させることは間違いない。これから5戦、フェルナンデスとの戦いが厳しくなればなるほど、僕は小椋から何を聞き出せばいいのか困ることになる。勝って欲しいに決まっているし、チャンピオンを獲ってもらいたい。でも、「勝てますか? 勝てそうですか?」なんてことは絶対に聞いてはいけない戦いが続くのである。
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