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村田諒太、堤兄弟、今永虎雅…注目プロボクサー続々輩出の東洋大で、三浦数馬監督が「プロ転向を勧めない」理由とは 

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前田衷

前田衷Makoto Maeda

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photograph byMakoto Maeda

posted2022/09/25 06:02

村田諒太、堤兄弟、今永虎雅…注目プロボクサー続々輩出の東洋大で、三浦数馬監督が「プロ転向を勧めない」理由とは<Number Web> photograph by Makoto Maeda

2017年、村田のミドル級タイトル獲得を祝うパーティでともに写真に収まった、当時高校生の堤駿斗(左)と中学生の堤麗斗

 2017年の全日本選手権フライ級優勝者・馬場龍成(三迫)は、パンチ力がないのを自認しつつ「非力でも勝てることを証明したい」と勇んでプロ入りしたが、2戦目で初黒星。こちらは前途多難なようである。

 他にも、全国大会優勝経験はないものの、UJからの豊富なキャリアを誇る渡来美響(三迫)や豊嶋海優(大橋)も白星発進。ともに大手ジムでなければすぐにも看板を張っている選手だ。

 ざっと東洋大出身のホープたちを紹介したが、実は三浦監督自身も東洋大を卒業後にプロに転じ、後に世界王者となる下田昭文を攻略して日本スーパーバンタム級チャンピオンになっている(2008年)。ボクシングおたくがそのままボクサーになってしまったような人で、アマチュアで思うように結果を残せず、自分試しにプロになった。そして引退後はサラリーマンを続けながら、OBとして母校で後進の指導に当たっていた。

 一方、当時の村田は東洋大の職員としてボクシング部のコーチを務め、近い将来の監督が約束されていた。しかし、ロンドン五輪で金メダルを獲得し、プロ転向に舵を切った。そのおかげで、三浦監督の人生は一変。当時の東郷武総監督から指導者としての才能を見込まれ、コーチを経て村田が座るはずだったポストに抜擢されたのだ。大学リーグの1部校の監督になった元プロのチャンピオンは、他に近畿大学の名城信男監督(元世界スーパーフライ級王者)しか聞いたことがない。プロ経験者のアマチュア復帰が認められるようになったいまの時代だからこそ、活躍の場を得られたことに三浦監督は感謝している。 

大学ボクシング部の使命

 そうか、監督が元プロの王者だから東洋大からプロ転向が多いのか……と思う読者がいたら、それは早合点。「部員にプロ入りを勧めることはありません、むしろ……」と三浦監督は以下のように力説する。 

 指導者として部を預かる三浦監督は、東洋大の職員でもある。その使命は部を強くすること、同時に「学生である部員にしっかり単位を取らせ、卒業させること」だと言う。プロになっても、誰もが村田の成功を再現できるわけではない。

「学生には、プロに行くのは自由だけど、引退後のことも考えてから決めろと言っています」

 元プロだからこそ、その厳しさを知り、引退後の彼らの行く末まで心配する。あえてプロでやれとは言わないのである。 

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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