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村田諒太、堤兄弟、今永虎雅…注目プロボクサー続々輩出の東洋大で、三浦数馬監督が「プロ転向を勧めない」理由とは
text by
前田衷Makoto Maeda
photograph byMakoto Maeda
posted2022/09/25 06:02
2017年、村田のミドル級タイトル獲得を祝うパーティでともに写真に収まった、当時高校生の堤駿斗(左)と中学生の堤麗斗
今も昔もアマチュアのトップ選手はほとんどが大学生かそのOBである。高校・大学とアマチュアのキャリアを重ねる中でボクシング技術を磨き、強い相手との対戦でもまれることで一層レベルアップした選手たちがプロに転じてくる。プロの側も、基礎がしっかりしていて、即戦力として期待できる彼らを歓迎するのだが、最近は帝拳や大橋など大手のジムにアマの逸材が集中する傾向がみられる。
さて、本稿で注目したいのは、今現在の大学の王者・東洋大学、あの村田諒太の母校である。2000年に初めてリーグ戦の1部に昇格しており、大学ボクシングの中では新興校とみられているが、それでも創部60年を超える強豪校。去る8月27日水戸市で開催された全日本大学王座決定戦でも、関西リーグの優勝校・大阪商業大学に9-2と圧勝して3年ぶり2度目の優勝を飾ったばかりである。
この大会のМVPにはライト級の堤麗斗が選ばれた。3年前に東洋大が初の大学日本一に輝いた時の最優秀選手はいまプロで活躍する注目の堤駿斗だから、麗斗は兄に並んだわけだ。
村田に刺激されてか後輩たちがプロ転向を試み、何人かのチャンピオンも育った。最近引退した久保隼は部を中退してプロに転じ、世界スーパーバンタム級を制している。現役の小原佳太はウェルター級という難攻不落の階級の世界まであと一歩と迫りながら、これまで2度(1度は挑戦者決定戦)敗れ、なお3度目の正直に思いを託している。
注目選手多数の東洋大OB
「現在プロで戦っているのは、うちの選手だけで10人はいるでしょう」と語るのは、同校ボクシング部の三浦数馬監督だ。まだ進退を明らかにしていない村田諒太を含めての数字ではあるが、これは驚くべき数字である。他校はせいぜい4、5人程度にすぎない。
特に最近デビューした中に注目選手がいる。前述の堤駿斗(志成)は7月の初戦8回戦でタフな相手にいきなりフルラウンドを戦わされた。38戦目の古豪、比国のジョン・ジェミノにやや手を焼かされたが、強気にカウンターを狙うなど、才能を随所に披露して文句なしの判定勝ちを飾った。「次代の井上尚弥」と呼ばれるのは重圧だろうが、アマ時代には世界ユース選手権で優勝の経験もある。潜在能力の高い万能型で、つい期待したくなるホープである。
堤と同期の今永虎雅(大橋)にも期待がかかる。「たいが」と読む名前もインパクトがあるが、高校では8冠を達成した。これは3年間で出場できるジュニアの全国大会すべてに優勝したというパーフェクト記録である。6月にデビューして2戦2KO勝ち。順調に伸びれば世界戦のリングに立てる才能がある。