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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「せめて5年前に実現していれば…」の塩試合も 金、金、金…“嫌われた王者”メイウェザー45歳、朝倉未来以前のドリームマッチを振り返る
posted2022/09/24 11:05
text by
林壮一Soichi Hayashi Sr.
photograph by
Getty Images
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2005年6月にスーパーライト、翌2006年4月にウエルターと、4階級を制したメイウェザー・ジュニアは、オスカー・デラホーヤとの戦いを渇望し、執拗な挑発を続ける。メキシコ移民の血が流れたデラホーヤを嘲笑うかのようにソンブレロを被って記者会見に現れ、「お前はチキン(臆病者)だ」と鶏の動きや鳴き真似を繰り返した。
この時、デラホーヤはWBCスーパーウエルター級の王者であり、ゴールデンボーイのトレーナーは息子に解雇されたメイウェザー・シニアが務めていた。
ジュニアの参謀である叔父のロジャー・メイウェザーは言ったものである。
「兄の教え方が悪いんじゃない。ただ、私のスタイルの方が、フロイドには合うんだ。パワーじゃなくコンビネーションを用いて、よりアグレッシブに戦うことを課している。フロイドのパンチ力は私の現役時代より弱いんじゃないかな。ボクサーは、自分に合ったスタイルを確立しなければならない。長所で短所を補うんだ。
デラホーヤに対しては十二分な勝算がある。フロイドと彼じゃモノが違うさ。トレーナーとして兄との対決にもなるんだろうが、お互いプロだから気にはならないよ。自分の仕事をするだけさ。まぁ、どちらが優秀なファイターか、そしてトレーナーであるのかを決めたいね」
「息子の敵ならば、200万ドル払ってほしい」
2007年5月5日、メイウェザー・ジュニアは5階級制覇を成し遂げるべく、デラホーヤに挑む。しかし、シニアはチャンピオンのコーナーから外れた。
「息子の敵として戦うのであれば、200万ドル払ってほしい。関係がどうであれ、私たちは親子だ。血は変わりようが無いんだ」
シニアはそう述べたが、カネは単なる口実で、息子とリングで向かい合うことを避けたのだ。デラホーヤは130万ドルを支払い、マニー・パッキャオのチーフセコンドであるフレディ・ローチを雇い入れた。
両者はフルラウンドの攻防を見せ、メイウェザー・ジュニアが2-1の判定勝ちでベルトを奪う。同ファイトは245万世帯が購入し、PPVだけで1億3600万ドル強の収益をもたらした。チケットの売り上げは1841万9200ドルと、ラスベガスで催されたボクシング興行の新記録を樹立した。
メイウェザー・ジュニアはこの一戦で2500万ドルを手にし、名実ともにスーパースターとなった。デラホーヤは5200万ドルを稼いだものの、ベルトを失い、敗者としてリングを降りた。
新チャンピオンは試合後に言った。