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「白のユニホームは狙われやすいと聞いていたのですが…」ある女子陸上選手が吐露した“性的画像”被害への思い「最近は無観客なので、集中できる」
text by
鎌田理沙(共同通信)Risa Kamata
photograph byGetty Images
posted2022/09/25 11:02
共同通信の報道により世間に広く問題として認識された“性的画像”の被害。その端緒となったのは記者の経験と女子選手の証言だった
「最近試合が無観客なので、今は集中できるというか。そういうことを気にしなくて良いなあとは思っています。この被害を受けている状況って変わらないし、むしろ増えていくと思うんです。だからどうにかしないと、被害を受ける人が増える一方かなと思います。最低限のこと(対策)はしてほしい。撮影しているほうもやましいことがなければ(会場で撮影した写真を)提示することに対して抵抗もないはずだから、やってもらえたらこっちも安心して、試合中気にせず競技できるなあって」
「私は被害を公にするのも恥ずかしいと思ってしまったというか、自分からそれを発信するのは恥ずかしいと思ってしまうので言えないだけなんですが、他の選手がそう言ってくれるのは私にとって、とても心強いです。ありがたいなと思います」
女性選手2人が被害を取りまとめ
取材も終盤に差しかかったとき、彼女がふと言った。
「選手の声を集約するアスリート委員会から、被害について日本陸連(日本陸上競技連盟)に意見書を出すという話があるんです」
意見書とは? 彼女に聞いたところ、前々からSNSなどで被害を訴えていたある女性選手2人が代表になって、他の選手の被害状況をとりまとめているのだという。彼女も(スマホの画面を保存する)スクリーンショットなどを数点提出したという。
そのうちの1人の投稿は以前、目にしたことがある。たしかユニホームを性的な目で見られることが嫌だと訴えていた。もしかしてと思い、聞いてみた。
「その選手って、もしかしてあの、Bさんですか?」
「そうです。発信力もあってしっかりされていて。その人が発案されてまとめてくれているんです」
日本陸連のアスリート委員会といえば、08年北京五輪陸上男子4×100メートルリレーで銀メダルを獲得した高平慎士さんを委員長として、現場の選手の実情を日本陸連に伝える働きをしている。
19年、男子10種競技の右代啓祐さんの世界選手権へのエントリーが承認されなかった問題では、アスリート委員会が日本陸連に要望書を提出し、本人に直接説明の場を設けるなど、選手と日本陸連の橋渡しのような役割を果たしたのだという。
もしこの意見書がアスリート委員会を通して本当に日本陸連に提出されるのだとしたら、これは大きなニュースだ。今まで解決されてこなかった問題に、当事者の女性選手が声を上げて被害を訴えるのだから。これを機に、何かが変わるかもしれない。
その選手にぜひ取材を申し込みたいので、彼女に取り次ぎをお願いした。取材はOKとの返答をいただいた。約2週間後、B、C選手に都内で取材させてもらうことになった。
<#2、#3へ続く>