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「自分の殻を破るため」田中希実23歳が海外レースに出場する理由「国内ではカッコよく勝たないと…」「レース前からイライラしてました」
posted2022/09/16 17:00
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
Ayako Oikawa
9月11日、ニューヨークの5番街で1マイル(約1600m)のロードレースが開催された。1500mの日本記録保持者、田中希実(豊田自動織機)は世界陸上や五輪のメダリストを相手に堂々の走りで、4分20秒の5位という好結果を出した。
オレゴン世界陸上1500mで銅メダルを獲得した英国のミュアーが800mすぎから抜け出す展開となったが、田中はしっかりと集団につき、残り200mで8位からジワジワと順位を上げ、5位でフィニッシュラインを駆け抜けた。
「下り基調のコースなのでラスト200mでも足が止まらず、スプリントで勝負できたのは自信になった」
レースを終えた田中の目には涙はなく、ほっとした表情を見せた。
プロランナーはもちろん、幼稚園児、小中学生、そして70代を超える人など、国籍もさまざまな8000人のランナーが、メトロポリタン美術館をスタートし、セントラルパーク横の5番街を駆け抜けたが、「皆が楽しんで、大会を盛り上げている雰囲気がとても良かった」と笑顔で話した。
殻を破るために積極的に海外へ
田中は8月下旬から海外遠征に出発し、8月30日イタリア競技会の3000mで優勝。その後、1週間ほどボストンで練習をした後、ニューヨークの1マイルレースに臨んだ。
積極的に海外レースに出る理由は「殻を破るため」だ。
日本国内の1500mでは田中の力は突出しているため、競い合うレースというのはなかなか経験できない。レースの狙い、意義を持って、自分でペースを組み立てて走ることが多い。
また「(国内では)かっこよく勝たないといけない」とも話すように、色々と考え過ぎるために「ゾーンに入ったり」「無心で走る」ことはなかなか難しい。
一方、海外では田中よりも速い選手、同じレベルの選手が多数いるため、レース展開に乗ることができる。そこで自己ベストを出したり、様々なレース展開を経験し、新境地を開拓したいと望む。
過去に田中が大きく殻を破ったのは、間違いなく東京五輪だろう。