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「白のユニホームは狙われやすいと聞いていたのですが…」ある女子陸上選手が吐露した“性的画像”被害への思い「最近は無観客なので、集中できる」
text by
鎌田理沙(共同通信)Risa Kamata
photograph byGetty Images
posted2022/09/25 11:02
共同通信の報道により世間に広く問題として認識された“性的画像”の被害。その端緒となったのは記者の経験と女子選手の証言だった
スポーツの会場で、女性選手を狙った盗撮がはびこっている――。
この前は盗撮犯と間違われた同期の男性について、あまり真剣に考えていなかった。しかし、そもそも人員が決して足りているわけではないだろう学生連盟の係員が見回りをして、怪しい人にわざわざ声かけをしないといけないくらい、現場の被害は深刻なのかもしれない。勘違いされた彼もかわいそうだし、隠し撮りをする人が実際に会場にいるということだ。
「競技に集中したいのに、ほんと迷惑です」
憤ったA選手が漏らした言葉だ。悪いことをしているのは選手でも撮影がしたいファンや学生記者でもなく、迷惑な撮影をする人々だと、強く思った。
コロナ禍で取材ができるスポーツの現場はほぼ消滅
時は過ぎて20年8月、世界中が未知の感染症である新型コロナウイルスに翻弄されていた。
年始から日本でも猛威を振るい始め、国内のスポーツイベントは、春の選抜高校野球やインターハイなどがことごとく中止に追い込まれた。
夏に開幕予定だった東京五輪・パラリンピックも3月に史上初となる一年の延期が正式に決定され「こんな大変なときにスポーツどころじゃない」という鬱積した思いが、世間に充満していた。
その雰囲気は、共同通信社に入社して、当時入社2年目だった私もひしひしと感じた。
スポーツの取材がしたくて、就活で運動部採用枠のある共同通信を志望し、19年春に入社。1年間松江支局で勤務し20年に本社の運動部に配属されたが、コロナ禍で取材ができるスポーツの現場はほぼ消滅していた。
私たち、東京来てからなにもしてないよ
ベテランの先輩記者も担当競技の重要な大会がなくなり、リモートで選手の近況を聞き出さないといけないようで大変そうだった。取材先となんのつてもない若手に、できることはないのではないか、と感じられた。
「私たち、東京来てからなにもしてないよ。このままだとやばいよね」
東京都港区の三田に位置する「伊皿子寮」の一階ロビー。東京本社勤務の若手らが集められる社員寮で、同僚の品川絵里記者とデリバリーの夕食をほおばりながら、2人で“作戦会議”をしていた。
品川記者は18年入社の運動部採用の記者で、初任地の大分支局から、同じ20年春のタイミングで運動部に異動した。
共同通信社は運動部や写真部の枠で採用された記者も、初任地は全国各地の地方支局に配属され、一般記者として警察取材などを担当するのが通例だった。
このままではまずい。どうにか打開策を見つけないと
コロナ禍以前の地方支局で県警取材に精を出していた頃とは違い、取材のチャンスがなかなか回ってこない生活に、焦りが募っていた。