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涼しい顔してるけど…実はスゴい高橋藍のレシーブが“世界8強”に絶対必要な理由〈20歳ラストの試合で見せた“嫌な動き”とは?〉
posted2022/09/02 11:01
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Itaru Chiba
もはやスタンド席にマスク姿の人を探すほうが難しい欧州、ポーランドとスロベニアで開催中の世界選手権で戦う男子バレーボール日本代表を見ながら、つくづく感じた。
バレーボールってやっぱり面白い。
背丈で上回る相手にも、むしろその高さを利用してブロックに当ててチャンスをつなぎ、ここぞ、の場面を逃さず相手コートに叩きつけるスパイク。また別の時には、1本で相手を黙らせるようなサービスエース。
7月のネーションズリーグ期間中に負った左足首捻挫の影響が心配された石川祐希は復帰を果たすと、攻守の要としてチームをけん引。攻撃ではオポジットの西田有志が柱となり、2枚、時に3枚揃おうとする相手ブロックを文字通り“吹き飛ばす”スパイクで得点を重ね、長年日本のウィークポイントとされてきたミドルブロッカーの山内晶大、小野寺太志が攻守で存在感を発揮する。
もちろん、その攻撃陣が活かされるのは日本男子バレーの頭脳と言うべきセッターの関田誠大の絶妙なトスワークがあり、関田が選択肢を増やせるのはリベロの山本智大を軸とした守備力の安定感があってこそ。
日本代表は1次リーグでブラジルに敗れはしたものの、カタール、キューバに勝利して2勝1敗でグループ2位通過を果たし、目標と掲げるベスト8進出にまた一歩近づいた。
加えて、注目すべきはその結果だけでなく、男子バレー、バレーボールの面白さを「どうだ」とばかりに見せつける成長著しい1人の選手だ。
高橋藍、20歳。もとい、この9月2日で21歳。
キューバ戦で見せた“嫌な動き”
日本人に最も好まれるスタイルのバレーボール選手。決して大げさではなく、世界選手権で見せる高橋のプレーは、実に献身的で「個」の力が向上し続けていることをこれ以上ない形で見せつけている。
たとえば、負ければ決勝トーナメント進出すら危ぶまれる状況に置かれたキューバ戦。
世界最強とも言われるキューバのミドルブロッカー、ロベルランディ・シモンを前にしても臆さず序盤からミドルの攻撃を多用した関田のゲームメイクや、両チーム最多6本のポイントを叩き出した小野寺のブロック。さらにはラリーを制する西田のスパイクや、終盤に石川と交代して入った大塚達宣の見事なサーブなど、勝つべくして勝ったと言わしめる要素はいくつもあった。
だが、試合を通して高く貢献し、おそらくキューバからすれば最も嫌な働きを地味にし続けた陰の功労者が高橋だった。