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涼しい顔してるけど…実はスゴい高橋藍のレシーブが“世界8強”に絶対必要な理由〈20歳ラストの試合で見せた“嫌な動き”とは?〉
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byItaru Chiba
posted2022/09/02 11:01
9月2日に21歳の誕生日を迎えた高橋藍(日体大)。イタリアで磨きをかけた守備力を世界選手権の舞台でも発揮している
アナリストから提示されるデータに基づき、ローテーションや相手選手の傾向は事前に対策し、誰がどのポジションに入り、ブロックはどのコースを塞いで、レシーブで上げる範囲はどこかを細かく設定する。万全な準備を具現化し、勝利を引き寄せるために不可欠なのが個々の力であり、それが備わった今だからこそ、組織として機能する。ネーションズリーグから徹底して取り組んできた成果が発揮できている。
高橋が見せたのはまさにそんなプレーだ。
「もちろん時にはえげつないスパイクを打たれることもあるし、さすがに全部拾えるわけではないですけど、基本となる役割分担ができているから、その時は仕方ない、と割り切れるんです。全部を上げるのは無理でも、むしろ上がる確率が高いボールは必ずあって、それを逃さないことのほうがずっと大事。それが今の日本代表はできていると思うし、だから今は、どんな相手に対しても絶対に戦っていける、という気持ちが強いんです」
「いやいや男子もラリー面白いって(笑)」
世界トップクラスの選手の攻撃力は圧倒的で、Vリーグや国際大会、日本のバレーボール会場では派手な攻撃がズドーンと決まる印象が強いせいか、「1本で決まる男子バレーよりも、ラリーがつながる女子バレーのほうが面白い」という声が少なくなかった。
しかし近年、世界選手権に限らず、サーブやフロアディフェンスなど緻密な戦術に基づく男子バレーも質の高いラリーが展開されるのは当たり前になった。試合を見れば間違いなく「面白い」と感じる要素ばかりなのだが、ほかならぬ、高橋自身も「女子バレーのほうが面白い」と言われ続けてきた1人だと笑う。
「いやいや男子もラリー面白いって、と思っているんですけど(笑)、なかなか伝わりにくかった。だけど東京オリンピックで男子バレーを見てもらう機会が増えて、(石川)祐希さんのフェイクセットとか、見せるプレーを『面白い』と感じてくれる人も増えている実感があります」
ならば実行するのみ、と自ら行動する。世界選手権の壮行試合として7月末に沖縄で開催された日本代表の紅白戦でも、「会場の期待を感じて応えたかった」と言うように、最後のポイントでバックセンターから攻撃に入ると見せかけ、他のスパイカーにトスを上げるフェイクセットをして見せ、会場を沸かせたのも高橋だった。