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大阪桐蔭・藤浪晋太郎が甲子園で投じた決勝史上最速の153キロにも「驚きませんでした」「負ける気がしなかった」《春夏連覇の豪腕伝説》
posted2022/08/21 06:00
text by
阿部珠樹Tamaki Abe
photograph by
Toshiro Kitagawa/AFLO
勝利して世にその名を轟かせた者もいれば、敗北を糧に成長を遂げる者もいる。頂点を目指す戦いの日々には、後にプロで活躍する投手の人生を左右する運命の1日があった。灼熱のグラウンドの真ん中で、彼らとミット越しの対話を続けた捕手だけが知る真実とは。
Sports Graphic Number858号(2014年7月31日発売)の記事『[捕手が語る運命の一球]大阪桐蔭・藤浪晋太郎「決勝史上最速、最終回の153km」』を特別に無料公開します。
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春の選抜大会で藤浪晋太郎への注目は一気に高まった。優勝投手になったのだから当然だが、全試合で150km以上のストレートを投げるなど高校生の水準をはるかに超える投球内容はプロのスカウトの目を引くに十分だった。花巻東の大谷翔平との投げあいを制したのも大きかった。
しかしバッテリーを組んだ現ライオンズの森友哉によると、選抜のあとの藤浪はあまりよい状態には思えなかったという。
「試合でけっこう打たれることもありましたし、自分の投球ってどういうものなんだろうみたいな悩みを抱えているようでした」
藤浪はそうした悩みを口に出すタイプではなかったし、1学年下の森には特に相談することもなかったが、練習態度などにそうした悩みが垣間見えたのだ。
夏の大阪予選でも調子は上がらず…
春季大会を経て、夏の大阪予選がはじまった。予選に入っても、乱打されるようなことはなかったが、やはり藤浪の調子は上がらなかった。
「調子がいい時と悪い時がはっきりしているんです。立ち上がりがいいとだいたい大丈夫なんですが」
予選は決勝の履正社戦の終盤、打ち込まれて冷や汗をかいたが、なんとか勝ちぬくことができた。