「あれだけ速い球にも驚きませんでした」

「あまり連投したことはありませんでしたが、スタミナは十分持っていました。だから最終回にあれだけ速い球を投げてもそんなに驚きませんでした。連投はきつくないとはいいませんが、藤浪さんの場合は、ちょっと疲れがあるぐらいのほうが、余分な力が入らないのでかえってボールの威力が増すんです」

決勝の舞台でも150キロ超を連発し、光星学院を3-0で完封　©︎Toshihiro Kitagawa/AFLO

　2死を取り、最後の打者もフルカウントまで行ったとき、森はストレートのサインをつづけた。ストレートで三振を取って決めることにこだわったのだろうか。

「そうじゃないんです。あの日はストレートが一番よかった。変化球でもよかったんですが、バットに当てられるとなにが起こるか分からない。きっちり空振りを取って試合を終わらせよう。そういう気持ちでした」

　藤浪にも異論はなかった。152kmが低めに決まり、バットが空を切って春夏連覇の偉業は達成された。

2012年の甲子園春夏連覇を決めた瞬間　©︎Hideki Sugiyam