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現代の格闘界を予見?『ロッキー』シリーズはなぜ不滅なのか…好きすぎて“ロッキー化した”選手も「自分の試合を映画に寄せました」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph by2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

posted2022/08/19 11:01

現代の格闘界を予見?『ロッキー』シリーズはなぜ不滅なのか…好きすぎて“ロッキー化した”選手も「自分の試合を映画に寄せました」<Number Web> photograph by 2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

多くのファイターに影響を与え続けてきたロッキーシリーズ。『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』は8月19日より公開となる

「ロッキー」をリングネームに冠した男

 川村は81年生まれで、『ロッキー4』は映画館ではなくテレビで見たのが最初だったそうだ。それがロッキーとの出会いでもあった。川村というのはプロレスラーで元パンクラス王者のロッキー川村2である。ロッキー好きが高じてリングネームにしてしまった。

「たまたま見たんですけど引き込まれましたね。これは保存しなきゃと思って、最後のファイトシーンだけビデオに録画して何回も見ました。それからシリーズを全部見て」

 彼に限らず、ロッキーに憧れてファイターになった者は少なくない。ロッキー関連の曲を入場で使う選手も多数。川村はロッキーシリーズに“光と影”の魅力を感じたと言う。

「その時はもうプロレスファンだったんですけど、中継で見られるのは試合、リング上で輝いてるレスラーじゃないですか。でも『ロッキー』シリーズには影がある。トレーニングシーンが名物ですからね。闘う前の、普通は見られない準備とか努力が描かれているのがよかった。そもそもロッキーはうだつの上がらない“負け犬”だし、試合でもよく負けるんですよね。あと『ロッキー4』はドラゴの妻役のブリジット・ニールセンがめちゃくちゃ美人で。僕が気が強い女性を好きなのはその影響じゃないかな(笑)」

“現実離れした格闘シーン”になぜ憧れるのか?

 高校までは野球、大学でアメリカンフットボールに打ち込んだ川村は、卒業後にパンクラス入門。オープンフィンガーグローブ着用の総合格闘技団体として運営されるようになっていたパンクラスだが、立ち上げたのはプロレスラーだ。川村は創設メンバーの鈴木みのるに“プロレスの新弟子”として育てられた。

 本物のファイターに、映画の格闘シーンはどう見えるのだろうか。映画は観客に分かりやすいようにデフォルメされている。「あんなに派手な打ち合いなんて現実にはないよ」と冷めてしまうことはないのか。川村に聞いてみた。

「いや、僕はむしろ自分の試合を映画に寄せていく感じでしたね。“お客さんが見たいのはこっちだろ”って。もちろん試合では細かい技術、駆け引きも必要なんですよ。でもそれを見る人に押し付けても仕方ない。もともと自分だって、映画みたいな派手な闘いに憧れたんですから」

 確かに彼の持ち味は真っ向勝負の打撃戦だ。それを総合格闘技の試合で貫き、海外の強豪にも勝ってきた。ロッキーのトレーニングにも惹かれるそうだ。

「特に『4』なんですけど、ロッキーは雪が積もる自然の中とか山小屋でトレーニングするんですよ。ドラゴは最先端の科学的トレーニングなんですけど、ロッキーは石を持ち上げたり雪の中を走ったり。自重トレーニングも多い。今は当時より練習方法が進歩してますけど“結局はロッキーのやり方だよな”って感じますね。これをやるのが一番強くなるはずだって。いろんな面で影響受けてます、ロッキーには」

【次ページ】 「今日のお前、ロッキーみたいだったな」

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